マスコミ業界は「格差社会」の典型だ

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   やれリストラだ賃下げだと、世間は世知辛い話題でいっぱいだ。そんなご時勢、うちには新聞からテレビまで、あらゆるメディアが取材にいらっしゃる。

「いやあ、うちも広告費がえらいことになってまして」
「ご愁傷様です」

なんて会話をしていたが、08年度の平均年収ランキング、上位は全部メディアではないか! いやはや! 非上場なので顔は出さないが、大手全国紙もほぼ同じ水準である。

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テレビ局社員と下請けの制作会社スタッフの年収には大きな「格差」が存在する
テレビ局社員と下請けの制作会社スタッフの年収には大きな「格差」が存在する

   テレビや新聞社の高給は昔から有名な話だったので、さして驚きはないものの、広告収入の減少による苦境は様々に伝えられている。そんな中、万難を排して労働者の賃金を守ったわけだ。まさに日本型経営の鑑!労働組合の皆さんも大喜びだろう。彼らがいつも言っているとおり、横並び処遇と終身雇用を維持したのだから。

   一方、同じメディアでも下請けの制作会社や編集プロダクションの労働条件はかなり悲惨で、年収300万を切る会社もザラにある。そういう会社は社長といっても、だいたいキー局の若手社員クラスの給料だ。

   それにしても、実に不思議な話だ。同じ業界、同じ仕事をしていても、企業規模によって5倍も年収が違うのだから。他の業界、たとえばITにしたって格差はあるが、大手電機クラスと3次請けでせいぜい1.5倍程度に過ぎない。平均年収1500万円と300万円台の下請けの格差解消のためには、一体どうすればいいのだろう? 不勉強な私には想像もつきませんが。

   そういえば数年前、「格差がひどい現場を教えてください」と某ニュース番組のディレクターが訪ねてこられたので、「テレビ局」と教えて差し上げたのだが、それ以来お見えにならない。何か気に障ることでも言ってしまったのだろうか?

メディアにも淘汰の時代がやってくる

   ところで、彼ら自身はこの問題をどう考えているのだろうか。そういえば昨年、雇用問題を考えるシンポジウムに出席した時の話。まさに、この点についての質問をぶつけられた某一流全国紙のベテラン編集委員(ランキングトップ3に入っているメディアグループの一員)が、逆切れしてこう叫んでおられた。

「そういうのは、そういう賃金しか払わない経営者が全部悪いんです!」

ということなので、やっぱりマスコミ的にはあくまで経営者が悪いみたいだ。テレビの討論番組でバカの一つ覚えみたいに"労使"代表ばかり並べたがるのも、きっと優しい労働者目線の裏返しなんだろう。中小企業の社長さんは、自宅を抵当に入れたり家族名義で借金したりと色々大変そうだが、もっともっと努力してください。

   ひょっとすると中には「高給取りのクセに好き勝手言いやがって!」と思う人もいるかもしれない。そんなあなたには、毎日新聞がおすすめだ。僕の知る限り、もっとも正社員と非正規雇用の格差の少ないメディアだから。派遣村報道にも熱心なご様子だったが、毎日だと親身というか他人ごとでないというか、行間からぐっと迫るものを感じてしまう。

   いずれにせよ、これからいよいよメディアも淘汰の時代がやってくるはずだ。その中で生き残れるのは、上っ面ではなく、芯の通ったメディアだけだ。「上っ面をはいでみたら、どのメディアにも芯なんてなかった」なんてことは無いように祈りたい。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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