2024年 4月 16日 (火)

「残業バカ一代」を「日本の強み」にしてはいけない

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   何十年も昔から有名な話ではあるが、日本人は残業が好きだ。いや、本音では嫌いなのだろうが、少なくとも統計上はドイツ・フランスより年間で600時間以上は働いている(総務省『労働力調査年報 平成17年』より試算)。「日本の強みは製造業」とはよく言うが、残業製造業とでも言ったほうが相応しい。

   ところで、残業が増えるメカニズム自体ははっきりしている。日本では原則、正社員に対しては首切り、賃下げといった雇用調整はできない。そんな中で唯一、会社都合で上下に調整できるのが残業だ。

   たとえば、会社がちょっぴり受注を増やした時、経営者や人事部がとりえる選択肢は2つある。まずは、正社員を雇って対応する方法だが、これだと(30歳の人を雇うとして)30年ローンで3億以上かかる機械を買うようなものなので、非常に慎重になる。

   そこで多くの場合、もう一つの選択肢が選ばれることになる。そう、すでに雇っている人間に、もうちょっと多めに働いてもらうこと、つまりは残業である。これなら仕事が減っても、いつでも調整可能だ。

   経済全体が安定的に成長していた時代であれば、最初の選択肢をとる企業も多かっただろう。だが今のご時勢、そんな強気企業は例外的だ。結果、調整可能な非正規雇用か、正社員の長時間残業が増えるわけだ。

「派遣の規制強化」が進めば「残業」はさらに増える

   現在、不況で残業禁止としている会社も多いが、採用抑制などで長期的にはむしろ残業は増えるのではないか。現状の正社員雇用制度にメスを入れないまま、派遣の規制強化だけをやったら、企業はさらに人手を絞り込むだろうから、なお一層、正社員の長時間労働には拍車がかかるだろう。いやあ、他人事ながら怖い怖い。特に働き盛りの30代は、今から生命保険にでも入っておくといい。

   それにしても、死にそうな顔で残業している人達がいる一方で、社会には入社したくてもさせてもらえない失業者もいるわけだから、日本型雇用というのはなんとも無駄の多いシステムだ。「日本人は勤勉だから」とか「残業は美徳だ」などと抜かす連中もいるが、とんでもない。単に労働市場が硬直的すぎて、労働力の効率的な活用が出来ていないだけだ。

   まずは正規・非正規なんて失礼な区分けは無くす。そして仕事が増えれば社員を増やし、減れば社員も減らせるルールを明文化する。そっちの方が、過労死予備軍で溢れた社会よりも、ずっと健全だと思うのだがどうだろう?

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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