2024年 4月 23日 (火)

「家庭内殺人の増加は大企業のせい」 亀井発言の是非

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   亀井静香金融・郵政担当相の「家族間での殺人が増えたのは(大企業が)日本型経営を捨てて、人間を人間として扱わなくなったからだ」という発言が波紋を呼んでいる。要するに、大企業が非正規雇用をたくさん増やして、いざ不況が来れば簡単に使い捨てるようなことをしているから格差が拡大し、人々が荒んで家庭内殺人が起きるというロジックらしい。

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「役員報酬」も「企業の内部留保」も雇用問題を解決しない

   改めて読み返しても単なる馬鹿にしか見えないが、一応これでも東大経済学部卒、期待の新政権で金融大臣をつとめるほどのお方なので、ここは一つ純粋な気持ちで検討してみよう。

   まずは文字通り「経営者が悪い」説について。僕の知る限り、経営トップの報酬が最も高い業種はテレビのキー局で、約1億円ほどである。一見すると高給取りではあるが、この業界は正社員の平均年収も1500万ほどあるので、トップの報酬を半分にしても正社員3人ほどしか雇えない。その他の業種も、およそ経営者報酬は正社員平均の3~5倍であり、よって、これは大した問題ではない(そもそも赤字転落したキー局経営陣については既に大幅減額されている)。


   次に、大企業自体が悪いとする説はどうだろう。つまり「内部留保を溜め込んでいる」説だ。大手の製造業の中には確かにバブル期を上回るような内部留保を抱えている企業もあるが、決算書を見れば分かるように、そのほとんどが設備投資だ。換金させたとしても二束三文の代物である。

   要するに、国内市場が少子化で縮小することが確実である以上、いやでも海外に打って出なければならず、その中で規模の優位を保つために、必要な設備投資が増えていったということだ。それでも「資本家は金をどこかに隠しているに違いない!」という人は、雇用問題よりも自身のおつむの心配でもするといい。


   では、人々の心が荒む理由とは何だろう。僕は犯罪の理由を検証もせずに誰かのせいにするのは気が引けるのだが、あえて何か一つ上げろといわれれば、それは馬鹿な政治家のせいだと言っておこう。

   なんのビジョンも志も持たないくせに、利権にメスを入れられそうになった時だけ、あらゆる手段を使って反抗する。発言の影響など考慮せず、パフォーマンスとしての政策をぶちあげて政局をかき乱す。そう、まさにあなたのようなドブネズミのせいで、日本が何一つ変われなかったことが、閉塞感の原因なのですよ、亀井さん。

   どうせ参院選までの間、お情けで恵んでもらったポストなのだから、もう少ししおらしくしてはいかがでしょう。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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