老大国ニッポンが「坂の上の雲」をもう一度つかむには

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   2009年11月29日から、NHKでドラマ「坂の上の雲」がスタートする。足掛け3年におよぶ社運をかけたものだそうなので、個人的にも期待大だ。というわけで予習もかねて原作を20年ぶりに読み返してみたが、これが実に面白い。ただ面白いというだけでなく、今の時代にぴったりとフィットしているような気さえしてくる(NHKはそこまで考えてないと思うけど)。

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「新興国」としての勢いで日本はロシアに勝利した

   作者である司馬遼太郎は大戦中、満州の戦車部隊に所属し、軍の不条理を身をもって経験しているものの、小説のテーマとして第二次大戦を取り上げることはついに無かった。だが本書を読めば、著者が第二次大戦につながる流れの中で、日露戦争をとらえていたことがよくわかる。

   本書には、3つの国がメインプレイヤーとして登場する。専制君主制度の下、硬直した社会と軍隊が軋みを上げる斜陽国ロシア。明治維新から心機一転、アジアの新興国としてスタートした日本。そして、洋式化を進めるものの旧体制は依然として残ったままの清。中盤以降は、堕落したロシアと活力に満ちた日本の対比が軸となる。

   結果については説明する必要はないだろう。技術や戦術、そして新興国としての勢いで日本はロシアに勝利し、物語はめでたくハッピーエンドとなる。

   ただし、小説は終わっても、歴史は途切れることなく次の物語へと続いていく。40年後の日本は、同じ白兵突撃戦術でソ連に敗れ、艦隊決戦主義で太平洋でも敗北した。原作で常にどこか陰があるのはそのせいだ。

   1つのモデルにとらわれ、そこから進歩することをやめてしまった組織は必ず崩壊するのだ。これは企業についてもいえることである。

価値観をゼロリセットする「規制緩和」が必要

   アメリカ向けに輸出していれば儲かった時代は終わった。もうアメリカ人は借金してまで日本の車や家電を買ってはくれないし、需要の大きな新興国を開拓するにしても、求められる製品は日本企業の何分の一かのコストで、新興国企業が作れてしまう。

   にもかかわらず、日本企業は相変わらずの銃剣突撃で、新興国企業と戦い続けている。デフレというのはその結果に過ぎない。目下、日本最大のライバルは、老体国・清の末裔である中国だ。

   ロシアも中国も、そして明治日本も、老大国から新興国へゼロリセットできたきっかけは「革命」だった。つまり、古い身分制度を崩し、価値観をゼロリセットしたわけだ。現代日本にも、雇用形態、企業規模というカースト制度がある。日本がもう一度新興国に生まれ変われるとすれば、トリガーは徹底した規制緩和と社会の流動化だろう。

   3年後、最終回を見ている我々が、ロシアや清の側になっていないことを祈るばかりだ。そのためにも坂の上の空気くらいは嗅いでおいて損はない。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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