2024年 4月 19日 (金)

「かつて思い描いた姿」とのギャップに悩む「団塊ジュニア」

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   『“35歳”を救え』(阪急コミュニケーションズ刊)という本が話題を呼んでいる。20年後に日本を背負う団塊ジュニアが、いかに厳しい状況に置かれており、将来に不安を抱えているか、という内容が中心だ。掲載されたインタビューを読むと、彼らが苦しんでいるのは、「かつて思い描いた姿」と「現在の姿」とのギャップのせいに見える。

親のように「子どもにやりたいことをさせたい」が・・・

   本書は2009年5月に「NHKスペシャル」で放送された内容に、20年後のシミュレーションや解決策の提言、1万人を対象にしたアンケートなどを追加したもの。アンケートによると、35歳正社員の69%が「収入はもう伸びない」、42%が「自分の会社が倒産するかもしれない」と感じ、30%が「解雇されるかもしれない」と不安を感じているという。

   そして、不安定な雇用や所得の伸び悩み、少子化などの「35歳問題」を放置すれば、シミュレーションによると、20年後の日本は「ゼロ成長」のまま、「消費税18%」「医療費の自己負担2倍」「失業率10%超」「年金30%カット」という世の中がやってくるという。

   また本書には、過酷な状況に苦しむ「35歳世代」へのインタビューも掲載されている。新卒で入社した会社で厳しいノルマに追われ、体調を崩して退職し、次の会社は倒産し、その次の工場も閉鎖して配置転換になった上に、年収が大幅に下がった人。転職を繰り返して収入が下がってしまい、結婚したくてもできないという人など。

   彼らは、団塊世代の父親のように、子どもにやりたいことをさせられそうもなく、妻には専業主婦の母のように楽な生活をさせられず、外に働きに出てもらわなければならない情けなさを語っている。結婚して子どもがいて「普通の生活」を送っているという「若い頃に思い描いていた35歳」と、今の生活が大きくかけ離れているということだろう。

最初から「安泰」を捨てている「U35世代」?

   一方で、「35歳世代」よりも下の「U(アンダー)35歳世代」は、今の状況を別の目で見ているようだ。32歳のAさんは、自分が大学を卒業した2000年前後は「35歳世代」の先輩たちよりも就活環境が厳しかったはず、という。「先輩たちが10社受けて1社内定だとしたら、自分たちはその5倍から10倍受けて、1社出るかどうかだった」。

   Aさんは新卒では正社員の口がなく、アルバイトをしながら資格を取り、景気が上向いたころに中堅企業に入社。働きながら専門性を磨いて独立を果たした。彼の言い分では、会社勤めをしていても収入が上がらないのは明らかだったという。「時代が悪い」と思ったことはないか、と尋ねたところ、

「確かに生まれる時代が違えば、楽はできたと思う。でも現実は違うし、こんな時代でも稼いでいる人はいる。先輩たちは『前の世代と比較して悪くなった』『こんなはずじゃなかった』と落ち込んでいるが、私たちは以前から『相当悪いな』と割り切っているところが違う。目標とする収入を達成して、35歳ころ結婚したい」

と笑う。31歳のBさんも、新卒で入社した小規模事務所で身につけた専門性を売りに、昨年春に大手企業の子会社に転職。収入が安定したので交際していた女性と結婚した。しかし、この不況で親会社の経費削減が進み、仕事が大幅に減った。給与もカットされ、先輩社員には解雇された人も出たという。

「生え抜きの先輩たちは、この会社が『安泰』と思っていたから、他の会社でも通用する専門性を意識してつけていなかったし、給与カットにも呆然としている。でも自分は、どんな会社でもいずれは潰れると思っているし、給与カットの経験もあるので、しようがないかなと。不安はあるが、この会社にいられるうちは、次の勤務先で売りとなる経験を積みたい」

「成長の道を見つけないと給料が上がらないのは当然」

   さらに年下の27歳のCさんは、小さなIT企業で働きながら、ひょうひょうとした口調で、こう語る。

「物心付いたころから不景気と言われていたから、何か変わった?という感じ。取引先のお偉いさんは、いまだにタクシーで会社に乗り付けているし、まだまだ余裕があるんじゃないの、と思う。日本は世界的に見れば、まだ豊かな国のはず」

   自分がやっている仕事を引いた目で見ていないと、より低いコストでやる国が出てくれば、そちらに流れてしまう。「新たな成長の道を見つけない限り、給料が上がらないのはしかたがないし、それを見つけるのが仕事」とも話し、時代が悪い、国に救って欲しいという言葉は出てこなかった。

   「35歳世代」は、自分や周囲が当然のように思い描いていた状況にならないことに、追いつめられている。しかし、より若い世代は古き良き時代にこだわりがなく、「こんなはずではなかった」と落ち込んでいないところが異なる。まだ年齢が若いから、というだけの違いだろうか。

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