女子社員が「痴漢で逮捕された社員と働きたくない!」

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   問題を起こした社員に対し、会社はどういう処分を下すべきなのか。刑事事件による逮捕など想定外の事態が起きてしまうと、判断に迷ってしまうものだ。ある会社では、痴漢で逮捕された社員の処分に頭を悩ませている。

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いつのまにか社内に噂が広がっていた

――中小印刷会社の総務課長です。先週の日曜日の朝、30代男性社員のAから携帯電話に連絡がありました。土曜日の深夜に、電車の中で女子高生に痴漢して逮捕されてしまったという話でした。彼は真面目な仕事ぶりで知られていただけに、驚きを隠せません。
   Aはその時、泥酔しており、混雑した終電車の中で、意識もうろうの状態で女性の身体に触ってしまったということでした。本人も非常に落ち込んでいて反省もしています。彼が深酒をするのは珍しいことです。
   当部では、仕事外のことでもあるので、本人に厳重注意をした上で、他の社員に知らせない方針を決めました。ところが、どこから漏れたのか、今週になっていつの間にか社内に噂が広まってしまいました。社員からは、

「あいつ、普段は真面目そうなのに・・・」
「怖くて近くに寄れないわ。話すのも気持ち悪い」
「会社は痴漢した社員を野放しにしておくの?」
と非難する声も聞かれます。Aと同じ部署の女性社員からは、こう言われました。
「これって懲戒処分の対象じゃないんですか? 何をされるか分からないので、早く辞めさせてください!」
   女性社員の気持ちも分からないではないのですが、このような理由で懲戒解雇してもよいのか、判断に苦しみます――

社会保険労務士 野崎大輔の視点
職務に関係ない犯罪行為では「即解雇」にならない

   刑事事件で逮捕されれば即解雇、と思われがちですが、そういう処分ができるとは限りません。私生活上の行為を理由とした解雇は、解雇権の濫用として無効にされた判例もあります。本人が否認している場合には、えん罪のおそれもあるので、必要に応じて休職処分程度にしておいた方が無難です。

   就業規則には、懲戒解雇事由として「会社の名誉信用を傷つけ、業務に重大な悪影響を及ぼすような行為があったとき」という規定があると思いますが、これにどう当てはまるかの判断が必要です。会社や本人の名前が大々的に報じられてしまった場合には、会社の名誉信用を傷つけたと言えるでしょう。また報道されなくても、責任の重い役職に就いている人の行為であれば、噂程度でも影響が大きいと考えられます。今回のケースでは、懲戒解雇には当たらないと思われますが、社内で厳しい声が上がっていることもあり、本人と相談して自己都合または会社都合の退職とすることもありうるでしょう。

臨床心理士 尾崎健一の視点
理解ある職場の中で「更正」の機会を

   普段から信頼を集めている人なのに、聞こえてくる社員の反応は厳しいですね。痴漢は卑劣な犯罪ではありますが、普段の真面目さが災いしてストレスが蓄積されていたのかもしれません。わいせつ事件やアルコールに絡む事件の再犯率の高さも、周囲の偏見によって更正の機会を与えられず、追いつめられたために起こるという側面もあるのです。今回のケースでは、Aさんにはお酒の飲み方などの自己管理を徹底させつつ、理解ある職場で仕事に復帰させることも十分考えられると思います。

   また、周囲の社員たちの気持ちのケアも考えた方がよいでしょう。普段は信頼されている彼のことですから、全員が同じように怒っているわけではなく、不安や不快感は性別やAさんとの関係性によって差があると思います。上司などが感じ方を個別に聞き取る場を作り、話してもらうだけでも緩和されるものです。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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