2024年 4月 16日 (火)

「経理2段」で失業率は本当に下がるのか

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   なんでも、民主党が「キャリア段位制度」なるものを立ち上げるらしい。

   経理2段とか営業初段といった具合に、スキルを認定したうえで資格化し、転職や再就職などを後押ししたいらしい。 選挙前に発表予定の新成長戦略にも入れるというから、そこそこ本気で考えているようだ。

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どこへ行った「ジョブ・カード制度」

   でもちょっと待ってほしいのだが、自民党政権時に「ジョブ・カード」という制度が作られて既に運用されている。これとどう違うのか?

   ジョブ・カード使ってる人なんて聞いたことないけれども、それならそれで、上手くいかなかった理由を研究して活かすべきではないか。広報したりパンフ作ったりといろいろお金もかかるわけだし、少なくとも民間企業であればそうするはず。

   そういう姿勢が見えないことからすれば、恐らくこれは「政策」ではなく「政治」なのだろう。

   前の選挙ではさんざん格差ネタで政権攻撃をやった現政権であるが、有権者の彼らへの信頼は相当がたついてきている。長妻さんが厚労相になった直後にこっそり発表した「相対的貧困率調査」では、過去10年で唯一格差が縮小したのは小泉政権時代だった。

   まあ確かに政権交代して派遣は減らしたけれども、失業者は増えたわけで、結果的に格差は拡大している。そもそもマニフェストに「同一労働同一賃金!」とドーンと書いておきながら、それについてはまったく何にもやっていない。

   このままだと「マニフェスト詐欺」だと叩かれるのは目に見えているわけで、そのためにも何かやってますというアドバルーンが欲しいというのが実情だろう。だからジョブ・カードは無視して、新たに「段位」なんてカビ臭いものをひねくり出したわけだ。

   恐らく選挙期間中は、

「我々は可哀そうな派遣切りをなくしました! 格差是正についても段位認定制度を導入いたしました!」

と叫んで回るに違いない。有権者の大半はそういう仕組みのお世話にはなっていないわけだから、「へー、民主も頑張ってるなあ」と騙せるかもしれない。

「規制緩和」でしか問題は解決できない

   でも、こういう政治ゴッコに付き合わされる求職者は怒るべきだ。ジョブ・カードが「フリーター2段認定書」に変わったからといって、現実は何も変わらない。増えていくのは本人の年齢だけである。

   そもそも、世の中の仕事をすべて分類して序列化し、かつ労働者がどれに該当するか把握するなんてことは、かつての計画経済同様に実現不可能だ。唯一、それに近いことができるのは市場だけである。

   というわけで、適正な労働市場の形成を阻害している規制の緩和こそが唯一の解決策であり、本丸は正社員の既得権となる。

   僕の感覚だが、実は多くの政治家は、このことに気付いている。でも、今はまだ言えないだけだ。

   イメージとしては真ん中にどかっと座りこんだ連合のまわりを、ジョブ・カードという旗を掲げた自民党と、段位という旗を掲げた民主党が、連合と目を合わそうとしないまま、ぐるぐる回っているようなものだ。

   放っておけば、彼らはいつまでもアリバイ作りのための政治を続けるだろう。次は「キャリア・ソムリエ制度」なんてできるんじゃないか。

   彼らにきっちり仕事をさせるには、外野の有権者が声援を送って後押しするしかない。具体的にどこに入れろとは言わないけれども、とりあえず現時点では、民主党の雇用政策は0点どころかマイナスだということは指摘しておこう。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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