2024年 3月 28日 (木)

上司の「物忘れ」がムチャクチャなんです!

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   仕事には約束がつきもの。守られなければ、当然トラブルになります。ただ、その原因が気の緩みや不誠実でなく、記憶力の減退だとしたら・・・。ある職場では、女性職員がベテラン上司の変調に気づき、どうしたらよいか不安を抱えています。

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イライラして部下に八つ当たり

――独立行政法人の総務担当です。私の上司で50代の男性課長のことですが、ここのところ物忘れが激しく、いよいよ仕事に支障をきたしてきました。以前は指示が的確だったのですが、最近は指示したことすら忘れていることがあります。
   先日も、ある省庁の資料が見当たらず「誰が持ち出したのか」と尋ねるので、調べてみると、前の月に「これは古いから破棄しておいて」と指示されたものでした。
   自分で口にしたことを忘れてしまい、会議の資料を自分で届けると言ったのに、先方から連絡を受けて、「どうして渡ってないの?」と尋ねてくることもありました。
   最近は、さすがに自分でも気づいてきたようなのですが、困ったことに、思うようにならないことがあると周囲に八つ当たりをするようになってきたのです。

「資料を準備するように言ったのに、なぜできていないんだ?」
「君は全て私のせいにするが、自分ができていないことを棚に上げるな!」
「そんなはずないだろ? 私はそんなことを言ってない!」
「憶えていないものは、憶えていないんだ!」
   私は、課長の指示をメモに書いたりメールでやりとりしたりして、証拠を残すようにし、なんども確認しているのですが、フォローし切れません。
   若い頃は、仕事の進め方を丁寧に教えてくれたり私のミスをかばってくれたりで、大変お世話になった尊敬する上司なので、今後も一緒に仕事がしたいのですが、そんな私も限界に近くなってきました。
   こんな調子なので、仕事が進みません。まわりも半ばあきらめ気味の様にも見えます。定年まで待つしかないのでしょうか――

臨床心理士・尾崎健一の視点
病気の場合は早期対応が必要

   人間は老化とともに、記憶力が下がることが一般的です。これは脳の生理的な変化によるもので、ある程度は誰もが経験します。課長は、以前は的確な指示や記憶力の持ち主だったようですので、加齢による記憶の低下をご本人が受け入れられず、精神的に不安定になっている可能性があります。

   あまりにも著しい場合は、若年性認知症なども考えられます。一般的な老化との違いとして、判断力や新しいことへの学習能力の低下を伴なうことなどが挙げられます。その他には、アルコール依存症などでも、記憶が消失したり判断力が低下したりします。

   いずれにしても、早期に適切な治療を受けることで、ある程度回復する例もたくさん見られます。上司の上司などに仕事への影響などを含めて相談し、本人に産業医や専門機関への受診を勧めてみてはいかがでしょうか。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
業務上の問題を起こす前に厳正に対処する

   課長は組織の要職です。指示を頻繁に忘れたり記憶が飛んでしまったりするのであれば、現在の業務を遂行することは難しいでしょう。周囲から慕われるよい人であったとしても、心証を害さないように配慮しつつ厳正に対処せざるを得ません。問題が起きる前に専門機関を受診してもらい、記憶力低下などがどの程度なのか、確認してもらうべきと思います。その上で、症状によっては業務の負担がかからない仕事へ異動してもらうことも考えられます。

   病状が進んでいる場合には、本格的な治療をするために短時間勤務に代えたり、休職したりする必要も出てくるでしょう。収入の減少を伴なうこともあるため、本人が抵抗を示す可能性もありますが、どうしても従ってもらえない場合には、就業規則の「就業に適さない」場合には解雇できるという部分を示して、治療か退職の選択をしてもらうこともあるかもしれません。しかし本人にとってもご家族にとっても、早期に十分な治療をすることが望ましいはずです。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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