仕事が終わらないので家に持ち帰っています

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   不況の中、仕事があるだけありがたい状況ではある。しかし、過ぎたるは及ばざるがごとしで、仕事がありすぎるのもまた大変だ。ある会社では、抱えきれない仕事を先輩から振られ、若手社員がどうしたものかと弱っている。

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残業につけたいが「ダメ」と言われた

――広告代理店の入社2年目の社員です。最近、先輩社員のAさんから急に振られる仕事が増えてきました。会議の前日に、「○○と△△に関する資料を集めておいて」と言われたり、打ち合わせの後に、

「じゃ、いまの話について、明後日までに企画書にまとめておいて」
といった具合に頼まれたりします。
   しかし私は自分が担当するルーティンワークもあり、急に頼まれても着手するのは夕方とか夜になるのがほとんど。しかもオフィスは残業削減の全社取組み中なので、午後8時には電気が消されてしまいます。
   そうすると、仕方なく自宅に持ち帰って仕事をするしかないのですが、恒常的にこういうことが続くと、疲れがたまってきます。他の同僚が楽しそうに連れ立って帰る姿を見ると、なぜ自分だけがこんなことをしなければならないのか疑問も湧いてきます。
   そこで思い切ってAさんに、仕事を家でやっていることを話し、「これって、残業時間につけてもいいですか?」と尋ねてみました。案の定、Aさんからは、
「そんなのダメに決まってるだろ。誰も家でやれって命令してないし」
と言われてしまいました。確かに、誰からも「家でやれ」とは言われていないんですが、そんなの詭弁じゃないですか。やりきれない仕事を振っておいて、どうにも納得いきません。どうやって会社に対抗していけばよいでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
労働時間とみなすことはできるが・・・

   指示された仕事をやりきるために、どうしても家に持ち帰ってやらなければならなくなった場合には、明確に「家でやれ」と言われたわけではなくても、「黙示的業務命令」があったとして、労働時間とみなされます。ただし、指示をされてもいない仕事を家で勝手にやっていた場合には、労働時間にはなりません。このあたりが、家での仕事をカウントする際に難しいところです。

   今回のケースは、労働時間とみなすことは可能だと思います。しかし、その前に自分なりの工夫をしてみることは必要です。先輩から仕事を振られるのは、会社では当たり前のこと。OJT(職場内研修)の一環としても必要なことです。それまでの限界を超える仕事量が来ることもありますが、自分なりに工夫をして、いかに就業時間中に終わらせるかを考えて実行することが成長につながります。仕事を受ける前から「当然持ち帰り残業がつきますよね」などといえば、「じゃいいや、君には頼まない」といわれ、経験を積む機会を逃すこともあるのではないでしょうか。

臨床心理士・尾崎健一の視点
メリハリをつけて生産性の低下を防ぐ

   入社数年のうちはオン・オフの区別なく、仕事のことを集中して考え努力することは、トータルで見れば豊かな職業人生を歩むために必要なことだと思います。ただ、緊張感が続いてしまうと疲労がたまり、マンネリにもなって生産性が下がります。

   メリハリをつけるために、「会社でやること」と「家でやること」の切り分けを工夫してみるのも有効です。プレゼン資料の作りこみは会社でやるとして、企画書のコンセプトや構成などを練ることは、帰宅中の電車や喫茶店、お風呂の中でもできることです。また、睡眠時間を必ず確保することも、生産性を下げないために大事です。

   ただ、どうしても作業時間が足りないのであれば、自分だけで抱え込まず、早めに先輩や上司の助言をうまく得ることも必要です。現在行っている仕事をリストアップし、「いま、こういう仕事の指示を受けているのですが、どう優先順位をつけたらいいでしょうか」と相談するのです。そうすれば、「じゃ、これから着手して」「これはやらなくていいや」ということになるかもしれません。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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