2024年 4月 20日 (土)

「部下は定時、管理職は終電」 これじゃカラダが持ちません

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   大手企業の海外進出で、業績回復の兆しが見える業種もあるようだ。しかし中堅以下の会社では、自社の事業環境を見極められなければ、経営の見通しも立てられないだろう。ある会社では、人手不足のしわ寄せが管理職に集まって、どうしようもなくなっているという。

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「間違いなく病気に」「平社員に戻してください」

――中堅の通信機器販売会社の専務です。不景気の影響で一時は経営危機にも陥りましたが、人員とコストの大幅削減で、なんとか収益を確保できるようになりました。
   しかし最近は、新たな問題が生じています。従業員が減ったことで、一人ひとりにかかる業務負担が格段に増えてしまっているのです。特に営業部門の管理職においては、深刻な問題になっています。
   当社では管理職の時間管理は本人に任せており、残業代は払っていません。一方でコスト削減のため、一般社員にはよほどのことがない限り残業させないことにしています。
   不急の外出を制限するなど、一般社員の業務効率化を口酸っぱく徹底しているのですが、それでもしわ寄せは管理職に行くことになります。
   管理職は自分が担当する大口顧客への見積や請求の提出、新規提案などのほかに、これまで部下が行っていた細々した問い合わせ対応なども引き受けざるを得ません。
   その結果、部下は定時退社、上司は毎日終電という状況が起こるわけです。
   管理職からは当然、「給料は上がらないまま、仕事と責任ばかり増える」と不満が漏れ、「平社員に戻してくださいよ」という愚痴にも真剣さがこもっています。
   「女房とほとんど会話がない。このままでは離婚」「これじゃカラダが持たない。間違いなく病気になる」「部下はプライベートを満喫しているのに、なんでオレたちだけが」といった不満も、もっともだと思います。
   このままでは休職者や退職者も出てくるかもしれません。経営者の一人として、どう考えていけばよいのでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
経営者が事業リストラをやり直せるかどうか

   個人的には、管理職の方々には、折りを見て転職を勧めたいところです。これまでは「全社一丸」の旗印の下、サービス残業で苦境を乗り切る会社もありましたが、高度成長期のような神風が今後期待できるわけでもなく、コンプライアンス上の問題もあるので、これからは避けるべきと思います。

   経営的な観点では、リストラの方法が間違っていたおそれがあります。売り上げに目を奪われ、収益性の悪い事業が残ってしまったのではないでしょうか。もちろん、事業環境の変化が大きすぎて、どうすることもできなかったのかもしれません。

   管理職の責任感に任せ、このようなやり方を続けていれば、彼らはきっと心身を害してしまいます。新しい収益事業の確立など事業の構造的な改善が図られなければ、倒産するのも時間の問題でしょう。収益性の観点から事業リストラをやり直すか、関係者に迷惑が掛からない解散・清算も検討することが必要ではないでしょうか。

臨床心理士・尾崎健一の視点
管理職同士のコミュニケーションを取りなおす

   野崎さんの指摘はもっともですが、景気回復の兆しもあり、何が状況を好転させるか分かりません。問題の根本的な解決は必要ですが、モチベーションが下がりきった状態では着手できません。心身の健康維持を図りつつ、少なくとも社内の雰囲気を明るく保つ方法を考えてみるのも手でしょう。

   相談者の専務さんが管理職の人たちを個別に食事に誘い、リラックスかつ非公式な雰囲気で「これからどうしていけばよいのか」と意見を聞いてみるのもいいでしょう。案外「これまで言う機会がなかったのですが」と、名案が出てくるかも。

   経営者との対話とは別に、管理職だけで集まる機会を定期的に設けている会社もあります。対話の内容は外に漏らさない、誰かを非難しないなどのルールを設けます。結論を出すことが目的ではなく、まずは「苦労を共有できた」「聞きにくかったことを先輩に聞けた」「困ったことがあれば聞いてもらえる場ができた」こと自体が成果になればよいのです。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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