2024年 3月 28日 (木)

日本の国会議員には、もっとカネを払うべきである

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   最近、議員報酬が高すぎる、という話を聞くことが多い。確かに給与が2,000万円以上、というような話を聞くと、何となく高いように思えてくる。

   しかし、本当に高いのか? 雰囲気だけで言っている可能性はないのか? そこで今回は日本の国会議員の報酬が高いか低いかを、米国のデータと比較しながら見てみようと思う。

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国会議員は「中小企業の経営者」でもある

給与以外の国民負担も考える必要がある
給与以外の国民負担も考える必要がある

   まず、現行の日米の国会議員(ヒラ議員)の給与を見てみよう。日本の国会議員は衆議院議員(480名)と参議院議員(242名)。どちらも年間の給料はボーナス込みで2,229万480円である。

   米国には上院議員(100名)と下院議員(435名)がいる。給与は同じで年間1,444万円(174,000ドル。1ドル83円で換算し、1万円未満を切り捨てた。以下同様)。

   ということで、日本の国会議員の給料の方が4割以上高いことがわかる。やはり日本の国会議員の報酬は高すぎた――と結論づけるのは早計だ。

   国民は政治家のために、給与だけではなく様々な経費も負担している。しかもその金額のほうがずっと大きい。だからそれも見ていかないと、国民負担の全体像が見えてこない。

   国会議員を「中小企業の経営者」に見立ててみると分かりやすいと思う。国から議員の活動に支払われるカネを全部足した金額、これが企業の売上に相当する。我々国民の負担だ。そこから様々な経費を引いたものが、その議員の懐に入る本当の「実入り」となる。

   日本では国会議員の活動のために、国(納税者)が以下のような費用を負担している。

・文書通信交通滞在費 年1,200万円
・公設第一秘書、公設第二秘書、および国会議員政策担当秘書の3人の給与
・議員会館の事務室
・JR全線無料または航空機月4往復分無料
・議員宿舎(家賃は自己負担だが割安)

   これらは基本的には必要不可欠な経費といってよいだろう。企業の役員であればオフィスの費用、通信費、移動のための交通費、秘書の給与などを会社が負担するのは当然だが、それと同様といえる。

   これらの総額がどれだけになるか。個々の事情によるので一概には言えないが、秘書3人の給与を仮に年1,500万円、事務室と宿舎で年1,000万円とし、これに文書通信交通滞在費1,200万円、議員の給与2,230万円を加えると、議員一人当たり5,000万円は超えるとしても、1億円よりはだいぶ小さいと思われる。

議員一人あたりの負担額では米国が大きく上回る

   では米国の議員はどうか。米国では上院と下院とで人数や機能が大幅に異なるので、報酬体系も上下院でずいぶん違う。以下、Congressional Research Serviceのデータ(2010年)を参照した。

   まず下院。税金から支払われる経費の合計は、最低1億1,855万円(1,428,395ドル)から最高1億4,604万円(1,759,575ドル)であると報告されている。

   最も多くを占めるのは、スタッフの給料だ。下院議員のスタッフは常勤18名とパート4名の最高22名。合計金額は7,840万円(944,671ドル)。スタッフ一人あたりの給料の最高額は1,397万円(168,411ドル)とされる。

   上院議員の経費は、下院よりも一段と大きい。州の大きさ、人口、ワシントンDC(首都)からの距離等によって異なり、最低のデラウェア州の2億5,648万円(3,090,168ドル)から最高のカリフォルニア州4億447万円(4,873,149ドル)までの幅がある。こちらも経費の多くは人件費である。

   以上である。国会議員一人あたりの国民負担は、給与はともかく経費を含めた総額では、米国よりだいぶ少ないことがお分かりになっただろう。なお、日本の場合、秘書3人以外のスタッフを雇う場合には議員の給与から支払われる。それを考えれば、2,000万円の給与も多すぎるとは言えないかもしれない。

   人口や議員定数などの条件が異なるので比較は慎重にすべきだが、少なくとも「日本の国会議員の報酬は高すぎる!」と簡単にかたづけるのはあまりに安易だ。

   政策スタッフの手薄さが政治の質に関係しているという指摘もあるし、議員への有能な成り手を遠ざけているおそれもある。我が国の国会議員には、必要な数の政策スタッフを雇えるように、もっとカネを払うべきだと私は思う。この問題はさらに追及していくつもりだが、今回はこの辺で。

小田切 尚登

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小田切尚登
経済アナリスト。明治大学グローバル研究大学院兼任講師。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ等の外資系金融機関で株式アナリスト、投資銀行部門などを歴任した。近著に『欧米沈没』(マイナビ新書)
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