「ハードワークしたくない…」 情けない部下たちに幻滅

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   大手企業から「多様な人材の活用」「画一的な働き方からの脱却」という声が聞こえる。しかし普通の会社では、一定レベルの人材を確保し、当たり前に働いてもらうことすらままならないところもある。

   ある会社では、会社の業績回復に向けてゲキを飛ばすも、マイペースを崩そうとしない部下たちがいることに、上司が「情けない」と嘆いている。

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商品開発マンのプライド感じられない

――消費者向け雑貨メーカーで、商品開発部門の部長をしています。最近、業績が伸び悩んで経営陣からハッパをかけられています。

   原因は、ライバル会社の台頭です。彼らは中国の協力工場と組んで新商品の点数を急速に増やし、ヒット商品も生まれています。

   これに対抗するためには、我が社のエンジンである商品開発部員たちに頑張って企画を出してもらわなければ、会社は持ちません。

   そこで「頑張っただけ報われる人事制度」を考え、部員の企画提案ノルマを上乗せする代わりに、達成ボーナスもアップすることにしました。仕事の進め方を個人に任せるとアイデアも湧きやすいと考え、権限委譲とともに裁量労働制を採用しようと思います。

   このことを部署で発表したところ、

「これまでどおり基本的に定時で帰れるようにしてほしい」
「趣味の時間もあるので毎日は残業できない」

と申し出るグループが現れました。期末までは集中的に頑張ってもらいたいのに、「行きたいイベントがあるので、夏休み前後に有給休暇を希望通り取らせてもらいたい」ともいいます。

   商品開発マンであれば、こんな状況で敵前逃亡するようなことはプライドが許さないはずだと思っていたので、情けなくガックリしてしまいました。こんな部下は、うちの部には要りませんが、他部署に異動させる余裕もありません。会社として解雇できるものでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
精神論でなく成果によって厳しく評価すべき

   定時退社や有休取得自体にペナルティを科すことはできませんし、企画提案ノルマが達成できていればその必要もありません。「先に帰ったから雰囲気が悪くなった」といった精神論ではなく、あくまで成果で評価するようにしなければ結果は出ません。とはいえ、社員は会社の方針に沿って働くのが本分であり、マイペースを貫けば評価が大幅に下がることを受け入れさせなければなりません。今回の件は即解雇はできませんが、会社の方針に従わず、あまりに業績が芳しくなければ退職勧奨もありえます。

   どんな条件を提示しても、働き方を変えさせるのが難しい社員はいます。ある程度できる社員を揃えて競争させなければ、ライバルと闘える強い組織にはなりません。ある外資系企業では、成績が悪いと認定した下位10%の社員を「ボトムテン」と呼び、退職勧奨をしていました。賛否あると思いますが、会社が倒産したら他の社員も路頭に迷います。ただし、退職強要や人権侵害とならないように注意することは必要です。

臨床心理士・尾崎健一の視点
画一的な人事制度の限界を踏まえた運用も必要

   人によっては、成果主義的な働き方に魅力を感じる人ばかりでなく、「仕事と私生活を分けたい」「この時期は子育てや介護など私生活を優先させたい」という人もいるでしょう。会社の考え方次第ですが、定時退社を希望し、ハードワークをしたくない社員の存在を許容しつつ、企画につなげようとする考え方もあるのではないでしょうか。生活者の視点は消費者向け雑貨の企画に有益でもあります。

   マイペースを崩そうとしない社員の扱いについて、異動の余地がないのであれば、部内における役割を変更して、引き続き働いてもらう方法も考えられます。たとえば、定型業務を任せ、高度な企画など非定型業務の担当者に比べて待遇を抑制するようなやり方です。また、これまでどおり企画開発をさせつつ、ノルマの水準と待遇をともに下げる方法もあります。なお、仕事がほとんど変わらないのに給料が下がる場合があるので、労働条件の不利益変更に関する手続きが必要な場合もあるでしょう。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
野崎大輔・尾崎健一:黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術
野崎大輔・尾崎健一:黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術
  • 発売元: 小学館集英社プロダクション
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2011/06/30
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