2024年 4月 19日 (金)

社長の不倫をバラしたら、クビになっても仕方ない?

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   男性ホルモンのテストステロンの値が高い男性は、闘争本能が強く仕事もできるが、浮気の傾向も高いという説があるそうだ。「英雄、色を好む」という言葉もある。

   ある会社では、社長の不倫現場を目撃したという社員が、「会社の対応が悪い」という理由でマスコミに告げ口し、取材が殺到してしまったという。

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開き直る社員「事実を言って何が悪い!」

――ITベンチャーの人事です。弊社の社長はユニークな風貌とキャラクターで、マスコミの取材をよく受けています。おかげで、会社の知名度も上がってきました。

   そう喜んでいたのも束の間、先日、会社のビルの入り口が騒がしいので覗いてみると、多数のカメラがズラーッと並んでいました。記者をつかまえて聞いたところ、

「ここの社長が、不倫相手の秘書と一緒に出社するってタレコミがあったんで…」

とのこと。混乱を避けるため社長には出社を控えてもらい、打ち合わせを予定していた取引先にも出直してもらうことにしました。

   その後、社内で調べたところ、企画職のAという社員が浮かび、呼び出して尋ねたところ、あっさりと白状しました。

「社長と秘書がホテルから出てきたところを、繁華街で偶然見かけた。総務に『会社の信用を落とすから止めさせた方がいい』と忠告したけど、何も動かないのでマスコミに知らせた」

とのこと。社長に報告したところ、「あいつ、よくもオレの顔に泥をぬってくれたな。懲戒解雇だ!」と激怒。A社員は数か月前の企画会議で社長から強い叱責を受けており、それを逆恨みしたのだろうといいます。

   ただ、不倫の噂は以前からあり、事実無根といえるかどうか。A社員も「事実を言って何が悪い。悪いのは後ろめたいことをしている社長」と主張します。取引先も

「おたくの社長、大丈夫?とばっちり受けたくないし、取り引きを考え直すかもよ」

と不安がっています。こういう場合、どんな処分ができるのでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
会社の信用を傷つける行為は厳しく処罰される

   粉飾決算や談合などの違法行為を正そうとして、社内の部署に知らせたけれど、是正しないので行政機関やマスコミに知らせたという場合には、通報者は「公益通報者保護法」によって不利益な取扱いから保護されます。ただし不倫は、民法上の不法行為ではあるものの刑罰規定に違反する行為ではないので、「公益通報者保護法」の対象にはならず、合理的な理由があれば会社はA社員を処分することができます。

   不倫が事実であろうとなかろうと、会社の信用を失墜させようとして悪意をもってタレコミをし、実際に会社の風評を悪化させたならば、就業規則の服務規律の「会社の名誉又は信用を傷つける行為をしないこと」に違反する可能性が高いと思われます。けん責などの懲戒処分は問題ないでしょう。ただちに懲戒解雇は厳しすぎるかもしれませんが、社に残っていても仕事はしにくいでしょうから、情状酌量で普通解雇(退職金などを支払う)にしたり、退職勧奨をするケースが多いのではないでしょうか。

臨床心理士・尾崎健一の視点
ワンマン社長は社員の反乱を招かないよう注意

   不倫は、当人たちが望んでやっていて、家族も黙認しているのであれば、個人の自由と言う人もいるかも知れません。しかし、社長が従業員である秘書と大っぴらにやるのはいかがなものでしょう。会社の評判や信用にも関わりますし、社員に対してもいい影響はありません。「自分たちが稼いだカネが、彼らの派手な遊びに使われている」と思われれば社員のモチベーションが下がりますし、今回のように他のトラブルをきっかけにつけ込まれ被害が拡大することもあります。今回のことはA社員にも問題はありますが、社長にも原因はあると認識すべきでしょう。

   また、A社員は社長から強い叱責を受けたことを根に持っていたようですが、これを「社員の甘え」「会社は悪くない」と甘く見ていると、社員の反乱を招きます。仮にA社員が何らかの形で退職という結果になったとしても、会社の評判は元に戻りません。いくらワンマン社長といえども、社員の人格を十分に尊重した扱いをするのは当然です。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
野崎大輔・尾崎健一:黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術
野崎大輔・尾崎健一:黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術
  • 発売元: 小学館集英社プロダクション
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2011/06/30
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