2024年 4月 16日 (火)

大阪府の「職員リストラ法案」はタダの選挙対策ではない

   橋下知事率いる「大阪維新の会」が、大阪府と大阪市、堺市において、自治体職員の整理解雇も含めた職員基本条例案を提出するという。

   「選挙をにらんだ人気取り政策だ」という声もあるが、個人的には、ツボをおさえた優れた政策だと思う。重要な点なので、簡単に解説したい。

「脱年功序列」でお役所仕事が変わる

   たとえば、人が余っている役所と、人手が足りない役所があったとする。普通に考えれば、余っている役所から足りない役所へ人を移せばいい。

   具体的なプロセスで言うと、余っている職員を解雇して、彼は労働市場にプールされ、彼もしくは他の誰かが人の足りない役所に雇用されるわけだ。

   ところが、終身雇用では適所適材は実現できないから、暇な職員は何か適当な仕事を作って「仕事をしているふり」をすることになる。当然、コストは税金という形で国民が負担することになる。

   官の肥大とか行政の無駄とか言われるものの根っこは、すべてここにある。

   この部分にメスを入れない限り、どんなに無駄を減らしても、すぐに別の新たなムダが発生してしまうだろう。民主党の「事業仕分け」の効果が限定的だったのも同じ理由による。

   ところで、今回の条例案は“解雇”の部分だけクローズアップされているが、幹部に任期制や公募制を導入する等、全体としてきっちり「脱年功序列」もセットにしてある。

   幹部が任期付きとなり、結果として流動化すれば何が起こるか。一言でいえば、組織内の価値観が180度変わることになる。

   従来の終身雇用型組織では、勤続年数に応じてポストは配分されてきた。これはつまり減点方式であり、目立ったチョンボをしないことがサバイバルの条件で、

「前例のないことはしない、リスクは取らない」

というのが合理的な選択だった。お役所仕事と言われるゆえんである。

国の政策に影響を与えられるかも

   ところが、任期付きポストだと、意欲とアイデアのある人にポストが任されることになるわけで、加点方式に切り替わることになる。

   今の日本に、どちらの人材が必要かは火を見るよりも明らかだろう。

   というわけで、大阪維新の会の条例は、行政の無駄削減という点でも、人事制度改革という点でも、本質に迫る良策だというのが筆者の意見だ。

   もちろん、上記の改革のポイントは、すべて民間企業にも当てはまる。現状、組織内だけで適所適材が行えているのは、複数の事業を持つ大手製造業くらいで、それでも自社内だけで効率的な再配置を行うのは限界がある。

   大阪府という日本第2位の自治体で一定の成果を上げられれば、国の政策にも影響を与えられるかもしれない。維新の会のさらなる躍進に期待したい。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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