2024年 4月 19日 (金)

オフィスに連れてきた子どもが騒いでうるさいんです!

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   認可保育園の待機児童は、全国で2万5000人にものぼるという。子育て世代にとって由々しき問題だ。政府は幼稚園と保育所の機能をあわせ持つ「総合こども園制度」の創設を検討しているが、すぐに実現するとは思えない。

   ある会社では、子どもの預け先がない場合には「オフィスに連れてきてもよい」と社長が発言したものの、社員からは子どもが騒いでうるさいという苦情もあり、どうしたものかと人事担当が悩んでいる。

「この会社で働きながら子育てしたい」という社員もいるが

――サービス業の人事です。従業員280人の中堅企業ですが、新しく就任した社長が働く女性に理解があり、子育て世代の女性を積極的に採用して支援を行っています。

   その一環として、人事へ事前申請を行えば、自分の子どもを会社のオフィスに連れてきてもよいということになっています。

   いまのところ毎日連れてくる人はいませんが、ふだん預かってもらっている身内の都合が悪くなったりするなど個々の事情で、ときどき連れてくる社員が何人かいます。

   この様子を見た社員からは、いろんな声が聞かれます。「殺伐とした職場が明るくなった」「自分も勤め続けてこの会社で子どもを育てたい」などポジティブな声が大半ですが、

「子どもの泣き声がうるさいときがある」
「走り回って仕事の邪魔をする子どもがいて迷惑だ」
「得意先から『子どもの声が聞こえますね』と嫌味っぽく言われた」

など不満の声も聞かれます。

   職場環境に関わることなので、人事として苦情を放置するわけにもいかず、かといって社長に「やっぱり無理なんじゃないですか」と言うこともできず困っています。

   これから年代的に子育て世代に入る社員が増えていきそうなので、そろそろ方針を決めたいのですが、どうすればいいのでしょうか――

臨床心理士・尾崎健一の視点
受け入れ体制とセットで。公的支援の申請も検討しては

   子育て世代に理解のある社長さんですね。同じように子どもを受け入れている会社をいくつか知っていますが、いずれも女性の採用や定着に大きな効果があったと聞いています。優秀な人材が「ここで働きたい!」と思う決定的な理由にもなっているそうです。社長が決断したのですから、人事としては「子どもをオフィスに連れてくるべきか否か」という議論に戻す必要はありません。前向きに考えて、問題を具体的に解決しましょう。

   とはいえ、子どもをオフィスに放置すればトラブルも起きます。仕事中の社員への負担もありますし、安全面でも問題もあります。受け入れはあくまでも専門家や経験者がケアをする体制とセットにすべきでしょう。「子どもの声がうるさい」という問題に対応するために、オフィス内に防音設備を備えた保育施設の設置が考えられます。「事業所内保育施設設置・運営等支援助成金」では「施設費」や「運営費」の支援が受けられますが、非常に人気が高く、すでに今年度分が終了しているものもあります。担当窓口と相談し、次年度以降に向けて計画を立ててみてはいかがでしょう。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
保育園の利用料補助や在宅勤務のしくみ作りも大事

   オフィスに子どもを連れてくることは、社員が安心して働ける環境づくりとしては、とてもよい取組みだと思います。しかし、仕事に大きな支障が出るようなら本末転倒ですし、かといって尾崎さんが指摘する体制をただちに整えられる会社も多くないでしょう。事業所内に保育施設を設置する以外の方法も、あわせて考えてみてはいかがでしょうか。

   たとえば、職場近くに私立認可保育園がある場合、社員にそちらを利用してもらい、会社が利用料の一部を補助することも考えられます。満員電車に乗らないですむように出社・退社時間に配慮し、短時間勤務を可能にすることも必要です。会社に来なくても仕事ができる「在宅勤務」のしくみやルールづくりをすることも、子育て世代には助かると思います。嫌味をいう取引先には、PRを兼ねて会社のポリシーを説明するといいと思います。お互いに足を引っ張りながら長時間労働をするのではなく、寛容な気持ちで効率よく仕事を行うことで全体の生産性が上がっていく好循環ができればいいですね。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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