2024年 4月 24日 (水)

自治体には「企業」の顔がある 民間手法の積極的活用を

競争を持ち込み「自己規律」を進めるべき

   こうした実態は、自治体の事業の多くの部分に、民間企業の経営手法を持ち込むことができる可能性を示唆している。もちろん、すべてを民間企業と同じようにできるわけではない。不採算分野の存在や膨大な初期投資が必要だからこそ、民間が手をつけることなく、自治体が運営することになった背景があるからだ。

   かといって、逆に自治体のサービスだから民間企業の経営手法はどれも当てはまらないとは言うことではないはずである。民間が導入しているKPI(Key Performance Index)は、それなりに有効な示唆を与えるのではないかと思う。

   たとえば、自治体が経営する地下鉄には不採算路線はつきものかもしれないが、1営業キロあたりの有形固定資産取得原価が大きく異なるのはおかしいのではないか。駅や線路以外に余計な施設があるのかもしれない。

   水道事業の場合なら、最大配水量あたりの有形固定資産取得原価が大きくなるのも、余計な施設がある可能性がある。水道の場合も電力と同じように、ピーク・デマンドが鍵になるから「最大配水量あたり」がKPIになる。

   自治体の行っているビジネス型のサービスをなんでもかんでも民営化しろとは、僕は思っていない。しかし、自治体経営のアドバイスをするようになってから、思いの外、自治体に民間企業の経営手法が導入可能であることがよく分かった。

   民間企業なら競争を通じて、効率化を徹底しないと生き残れないことが身にしみている。組織の論理よりも、競争の方が必然的に効率化が進む。自治体のビジネス型サービスの場合、多くの場合は競争がなく、組織の論理に埋没してしまいがちである。民間企業の経営手法を持ち込むかどうかは、自己規律の問題のように思える。(大庫直樹)

大庫直樹(おおご・なおき)
1962年東京生まれ。東京大学理学部数学科卒。20年間にわたりマッキンゼーでコンサルティングに従事。東京、ストックホルム、ソウル・オフィスに所属。99年からはパートナーとして銀行からノンバンクまであらゆる業態の金融機関の経営改革に携わる。2005年GEに転じ、08年独立しルートエフを設立、代表取締役(現職)。09~11年大阪府特別参与、11年よりプライスウォーターハウスクーパース常務執行役員(現職)。著書に『あしたのための「銀行学」入門』 (PHPビジネス新書)、『あした ゆたかに なあれ―パパの休日の経済学』(世界文化社)など。
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