ママ社員が会社に教師を呼びつけている… 放っておいていい?

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   学校に対し身勝手な要求を行う親を「モンスターペアレント」と呼ぶことがある。学校と保護者との対立を煽る言葉を使うべきではないという意見がある中、教師から自殺者が出るなど深刻な問題が起こっているのに適切な対応がされていないと反論する声もある。

   ある会社では、会社に教師を呼び出して面談を求める社員がいるので、課長が注意したが、「私が抜けたら会社も困るはず。何が悪いのか」と言われて対応に弱っている。

同僚はイヤミ「うちでも来てもらおうかしら」

――サービス業の人事です。カスタマーサポート部の課長が、困った顔でやってきました。小学生のお子さんを持つ30代A子さんが、会社に学校の先生を呼びつけているというのです。

   Aさんの息子さんが昼休みに鉄棒から落ちて骨折。病院で治療を受けているので、そのことを担任が報告に来たのだそうです。

   課長が「業務時間中に業務外の来客は困るんだけど」と言うと、Aさんは、

「じゃあ、私が病院に駆けつければよかったんですか? それじゃあ仕事に穴が空いてしまうから、会社のことを考えて私が呼んだんですよ。私が抜けたら会社だって困るんだし、来てもらった方がマシじゃないですか!」

と不満顔。ただ、同僚によると、呼び出しは今回だけでなく、これまでも「仕事が忙しくて学校で面談できない」という理由で、先生が来ることがたびたびあったようです。

   そんな様子を見て、「Aさんが許されるなら、うちでも来てもらおうかしら」「仕事と関係なくても大丈夫なら、セールスマンでもいいわよね」とイヤミを言う人もいます。

   Aさんは基本的に仕事熱心で、課長は「マネジャー昇格の最有力候補」と高く評価しており、サボタージュではないと理解しています。

   しかし、結果的には周囲から逆の見方をされています。こういうときは、どういう対応をすればよいのでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
業務と関係ない面談はノーワーク・ノーペイが原則

   Aさんの同僚が指摘するとおり、会社に勤める以上、勤務時間中は会社から課された職務に専念すべきなのが原則です。職務専念義務が免除されるのは、選挙権など公民としての権利を行使する場合や、健康診断を受診する場合に限られます。どうしても子どもの様子が気になるようであれば、所属長の了解を得て早退し、勤務から離れた状態で病院に行くべきでしょう。

   社内であっても業務と関係のない人と会っているのは不就労時間とみなされますので、ノーワーク・ノーペイの原則で言えば、その時間分は控除されてもおかしくないのです。将来のマネジャー候補であれば、部下に示しがつかないので会社として注意しても問題ないと思います。とはいえ、トイレに立つくらいは許されている職場だと思いますので、学校に電話をかけて先生から様子を聞くくらいは問題にならないはずです。このあたりは「程度の問題」になります。

臨床心理士・尾崎健一の視点
帰属意識を高めるために黙認する会社もある

   そもそも先生の職務時間中に、会社に呼びつけるのはいかがなものでしょう。ひとりの先生が全ての生徒に個別対応するのは難しいことを考えると、Aさんが仕事を終えてから病院に向かうか、仕事を早退するのが筋だと思うのですが。学校側がその点を問題視していないのであれば、あとは会社側の問題となります。

   原則は野崎さんの通りですが、会社の場所や時間を私用に使わせることは、社員のモチベーションや会社への帰属意識を高めるために一定の効果があると思います。実態として、社員が昼休みや業務時間中に生命保険などの契約説明を受けることを黙認している会社があると思います。外国人社員に業務中のお祈りを認めている会社もあります。私用の目的を上司に届け、その分しっかり帳尻をあわせて仕事をしてもらえばよいのではないでしょうか。ただし、ブルーカラーの職場とホワイトカラーの職場では、時間に対する考え方は同じではない可能性もあり、最終的には所属部門の判断によります。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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