2024年 4月 19日 (金)

採用者の「メンタルヘルス」状態 どうやったら見破れる?

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   メンタルヘルスを崩しやすいかどうかは、人によって大きく異なる。企業の採用担当者にとって「メンタルヘルス不全やその予備軍を採用したくない」というニーズは、あまり表立ってはいえないが、密かに重大な課題になっているようだ。

   ある会社では、数年前の中途採用者からメンタルヘルス不調者が続出したことがあった。それに懲りた各部署からは「精神疾患のない人を寄こして欲しい」と要求されているが、採用担当者は「どうやったら見破れるのか」と頭を抱えている。

「健康状態は良好」と書いた人が数ヶ月でうつ休職

――中堅メーカーの人事担当です。円高是正でようやく業績が上向いてきており、中途採用を再開しようと思っています。

   ただ、採用を希望する部門の採用要件用紙には、必要な経験やスキルに加えて、

「健康であること。特に精神疾患のないこと」

と書かれてくることが多くなり、頭を悩ませています。というのも、数年前に採用した中途採用者の中から、メンタルヘルス不調者が続出したことがあるからです。

   ただでさえ人員を制限し1人当たりの業務が増大しているのに、休みがちだったり休職したりでは、採用しても余計に負担が増えるだけです。

   とはいえ、採用の段階で見破るのは難しいのが現状です。エントリーシートの健康状態の欄に「良好」と書いた人が数ヶ月で休職した後で、「実は前の会社でもうつ病で休職したことがある」と打ち明けられたこともありました。

   そのときは「良好なんてウソじゃないか!」と裏切られた気分になりましたが、本人は「入社時点では寛解していた」つもりだったのかもしれません。

   「メンタルヘルス不調を経験した人は一切採用しない」とまでは言いませんが、これまでの経緯からすると、せめて欺かれる数は減らしていければと思います。何かいい方法はないでしょうか――

臨床心理士・尾崎健一の視点
怪しかったら採用面接を「朝イチ」に設定してみる

   不健康な社員を採用して無理に働かせない方法のひとつとして、朝一番に採用面接を設定することでスクリーニングを行うことがあります。一般的にうつ病などの精神疾患者は、朝が弱いものです。症状自体が詳しく分かるかどうかは別として、朝の面接時に負担感があらわれているようであれば、理由を尋ねてみるといいと思います。もしかすると二日酔いかもしれませんが、その場合にはアルコール依存とかセルフコントロール能力に問題があるのかもしれません。

   一方で、精神疾患の経験者でも働ける職場づくりをすることも検討に入れておく必要があります。どんなきっかけで社員がメンタルヘルス不全になるかも分かりませんし、将来的に精神障害者の雇用義務を課す法改正がある可能性も高いです。コミュニケーションがよく助け合いが行われる環境は、メンタルヘルス不全の発生を抑制しますし、健康な人にとっても働きやすい職場づくりにつながります。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
健康状態の「虚偽申請」は懲戒処分の対象になりうる

   採用の自由は最高裁でも認められており、精神疾患の既往歴を確認することは法的に可能です。しかし面接中に面と向かって「うつ病になったことはないですよね?」とは聞きにくいものです。健康状態についての質問項目を記載したチェックシートを作成し、メンタルヘルスの項目を入れて面接時に記入してもらえばいいでしょう。

   「記載したくない箇所は記載しなくてもかまいません」というスタンスにすることも大事です。「答えたくない」と言われた場合でも執拗に聞くようなことはせず、採用時の判断材料の1つとすればよいと思います。それでも、精神疾患の病歴を隠されて「健康」とウソをつかれる可能性もありますが、会社に申告していない既往歴が発覚すれば、入社時の虚偽申告になるので懲戒処分を下すことが可能です。そのときのためにも、入社時には必ず病歴を確認し、就業規則の懲戒規定を整備しておく必要があります。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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