「ノマド」は世の流れ 変わるサバイバル戦略

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   この連載のタイトルは「ノマド時代のサバイバル」。連載開始からしばらく経ちましたので、あらためて「ノマド時代」についてお話ししてみようと思います。

   ノマドというと、巷ではおもに2つの意味で捉えられているように思います。1つめは、カフェのようなオフィスでない場所で仕事をすること、つまり「リモートワーク」という意味でのノマド。もう1つは会社に所属しない「フリーランス」という意味でのノマドです。両方には共通する特徴があります。それは、何らかの「固定的なもの」から自由であることということです。

リモートワークも「逃走」「脱中心化」の表れ

多くのものが自由になり行き来する時代になってしまった
多くのものが自由になり行き来する時代になってしまった

   前者の意味では、仕事をする場所としての固定概念のオフィスから離れて、カフェなどの自由な場所で仕事をするということ。後者の意味では、会社という固定的な組織から離れてフリーランスとして働くということを含んでいます。

   この意味でノマドというのは、固定的なものから離れて、自由にいろいろな場所・組織を渡り歩く遊牧民といったように概念づけられるのではないでしょうか。

   ノマドという言葉は、いまやネット界隈では「からかい」の対象になってしまって良いイメージがありませんが、実際にはちゃんとした哲学用語です。

   哲学用語というのは「ロゴス」や「イデア」とかいう、あの手の小難しい専門用語の仲間です。ドゥルーズとガタリによって、800ページを超える難解な哲学書『千のプラトー』において「ノマド(遊牧民)」という概念が提唱されました。

   哲学用語なので、文字通りの「遊牧民」という意味ではなく哲学的な概念を示す言葉です。それがネット界隈では、いつの間にか「リモートワーク」や「フリーランス」を表す言葉として定着してしまったのです。

   リモートワークやフリーランスは、「ノマド」の概念の一つの現われです。哲学的には「ノマド」とは、固定的なものからの逃走や、インターネットのような中心がなくダイナミックな構造を自由に行き来するものとして表されています。

   そういう意味では、固定的な働く場所からの自由としてのリモートワークや、固定的な職場・組織からの自由としてのフリーランスや独立といったことが、哲学的な概念の世界ではなく、現実の世の中における「ノマド」的なものの一例ということになるのでしょう。

いくつもあるレールを乗り換えできる人が生き残る

   このように捉えると、世の中がノマド化する、ノマドの時代というのが少し理解できます。堅く固定され、ひもづけられていたから、多くのものが自由になり行き来する時代になるのです。たとえば次のような変化は、この流れを象徴するものです。

・情報:個々の装置から⇒ネットワーク上へ
・お金:国内で完結する通貨制度⇒世界の金融システムが複雑に絡み合う時代に
・働き方:終身雇用⇒転職、フリーランス、独立
・住む場所:生まれた場所で一生暮らす⇒海外移住、国籍すら変更する人も
・生き方:一つのことをする、一つの職業⇒複業、ギャップイヤー

   このような時代に、どうやって私たちは生きていくべきなのでしょうか。時代がどんどん流動的になり固定的なものが100年続くようなことがなくなり、お互いにつながりネットワーク化していく中で、個人の生き方、サバイバルの仕方も変わってきています。

   「いい大学をでて、大企業に勤め、結婚して家を買って、定年後は年金で暮らす」みたいな決まったレールそのものが固定的なものです。

   ノマド時代では、このような固定的なレールから自由になったり、いくつもあるレール同士を自由に乗り換えたりできる「ノマド」が生き残るのです。連載でこれまで書いてきた「オープン」「出戻り」「屋台ビジネス」「海外就職」といった例も、ノマド時代のサバイバル戦略として考えられるものです。(大石哲之)

大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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