雑用ばかりやらせていたら「追い出し部屋だ!」と言われました

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   大手企業における「追い出し部屋」という存在が社会問題になった。表向きは退職を強要することなく、「キャリア開発室」「キャリアデザイン室」などという部署で職務経験とは無関係な作業などをさせることを通じて退職に追い込むのだという。

   ある会社では、新しい仕事のしくみについていけない中年社員を、営業事務の手伝いの仕事に異動させたところ、「これは追い出し部屋じゃないか」と人事にクレームを入れられてしまった。担当者はどうすればいいのかと頭を抱えている。

機械の操作も覚えられず、やらせる仕事がないのに

――金型メーカーの人事です。当社は創業半世紀を前に、昨年から新商品の開発に力を入れています。これまでの業務プロセスの見直しも進めており、あらたな機械を導入し業務の効率化も進めているところです。

   ただ、会社が変わるにつれて、それについていけない社員が出てきました。入社15年目のAさんは真面目な性格で既存の仕事をコツコツしてきましたが、新しいやり方への適応力がとても弱いという欠点があります。

   業務の見直しによって、スキルの低い仕事へ追いやられていたAさんですが、工場長によると「仕事が機械に置き換えられたうえ、機械の操作も覚えられない」とのこと。暇を持てあましているので、どこかへ異動させてくれないかというのです。

   これまでの貢献もあるので会社としては直ちに解雇するのは忍びなく、異動先を探しましたが、会社の規模も大きくないのでなかなか見つかりません。やむなく営業事務の手伝いや雑用をお願いしたところ、数日経ったある日、人事にあらわれてこう苦情を言われました。

「これって、以前ニュースで話題になっていた『追い出し部屋』ってやつじゃないですか? 会社は私を追い詰めて、辞めさせようとしてるんでしょう!」

   そういう意向はないと本人に伝えたのですが、それ以外の仕事が本当にないのです…。これを続けていて、本人がどこかに申し出たら会社は悪者扱いされるのか心配です。どうしたらいいのか教えて下さい――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
これはパワハラではない。退職勧奨や解雇という措置も可能

   いわゆる「追い出し部屋」がパワハラ行為として問題になるのは、それが「不当な動機・目的をもってなされ労働者に不利益を負わせる」場合です。たとえば何の落ち度もない人を、ただ社長が気に食わないからといって、達成不可能な過重なノルマを課したり、逆に草むしりのような過小な要求しかしなかったりする場合が当てはまります。しかし今回のケースは、会社がAさんの雇用を守ろうと、異動先を探す努力をしたがどうしてもその仕事しかないのですからパワハラではないと思われます。会社はAさんに理由を説明したうえで退職勧奨をし、それでも受け入れられない場合にはやむなく解雇することが可能です。

   日本企業の場合は雇用維持が最優先されるので、仕事とスキルのマッチングに無理が生じやすい状況にあります。本人が現状に不満を抱いているのであれば、環境変化への適応が欠かせず、スキルアップしていただくしかありません。

臨床心理士・尾崎健一の視点
貢献に対する敬意を「再就職支援」という形で表す

   海外では業務と雇用契約がリンクしているので、所定の業務がなくなれば雇用もなくなることが多いです。一方で日本では業務が限定された雇用契約は少なく、社内で異動先を探す必要があります。それでも別の業務が見つからずに雇用継続が難しくなる会社もあり、いずれ退職してもらうのも選択肢のひとつとなります。しかし、社員をいきなり路頭に迷わせるのも忍びないですし、恨みを買うリスクもあります。そこで15年間の貢献に対する敬意を「再就職支援」という形で表してはどうかと思います。

   まずは、任せる仕事がなくなった理由についてAさんが納得できる形で示したうえで、退職金の上乗せをすることが考えられます。退職金制度がない場合には、特例で支給する場合もあるでしょう。そのうえで再就職先を探す支援をします。就職先とのマッチングを会社が費用負担して外部業者に委託するやり方もありますし、再就職活動中の一定期間の給与を保証するという方法もあります。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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