従業員がネットに「店の悪口」を書いた! 最後の給料を払いたくない

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   アルバイトが冷蔵庫に入った写真をツイッターに投稿したことに対し、勤務先のコンビニが処分を発表したのが7月半ば。特殊なケースと思われたのもつかの間、8月以降も続々と「模倣犯」が現れて各所で対応に追われた。

   ある飲食店でもこの夏、同様のトラブルを警戒し「勤務中はスマホをロッカーにしまうこと」をルール化したが、それを破る従業員が現れた。経営者が強く注意をしたところ、逆にフェイスブックに店の悪口を書かれてしまったという。

削除の頼みにも応じないので「こうするしかない」

   ――飲食店の経営者です。最近、バイトが変な写真を撮ってネットに流すのが問題になっていますが、従業員の多いウチの店でも心配しています。

   基本的に真面目な人が多いのですが、予防はしておかなければならないと考え、従業員に「勤務中は携帯電話をロッカーにしまうように」と言いました。

   しかし従業員のAが、仕事の合間にたびたびロッカーからスマホを取り出しているので、「勤務中のスマホはやめろ。今度やったら店で預かるぞ!」と注意しました。するとAは、

「ちゃんと仕事してるんだから、そんなに厳しくしなくたって。接客中は電話に出ないようにしているし。ロッカーに入れさせるのも横暴すぎます」

と反論し、今日いっぱいで店を辞めると言って帰りました。

   翌日、別の店員から「Aさんがフェイスブックにオーナーの悪口を書いてますよ」と教えられました。見てみると私の悪口だけでなく、職場の雰囲気が悪いとか、食材が新鮮じゃないなど誹謗中傷しています。

   私はすぐにAに電話して、書き込みを消すように言いましたが、応じるつもりはないようです。そこで、もし消さなければ今月分の給料を支払わないと通告しようと考えています。

   こうでもしないとAは言うことを聞かないと思うのですが、こういうやり方で何か深刻な問題は起こらないものでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
働いた分の給料は必ず支払わないと違法になる

   理由が何であれ、働いた分の給与を支払わないと明確な労働基準法違反となり処罰は免れません。Aさんとの話し合いの場を持つために、最後の給与は手渡しで支払うことにしてはどうでしょうか。支払う意思を示しておけば、Aさんが労働基準監督署へ告発しても対応できると思います。

   「今回のことについて話し合いの場を持ちたいので〇月〇日に来店してください。給料はその時に手渡しでお渡しします」という主旨の書面を送り、あまりに酷い誹謗中傷のコメントは名誉棄損となる可能性もある旨も添えておきましょう。それでもAさんが応じない場合には、フェイスブックの報告機能を使って削除依頼をかける方法もあります。なお、在籍中の社員が同様のことをした場合には注意指導を行い、内容の悪質性や会社に与えた損害などを考慮して懲戒処分を下します。

臨床心理士・尾崎健一の視点
「そこまでする必要があるの?」という不満にも配慮

   勤務中にスマホをロッカーに入れさせるルールは、研究所や工場、コールセンターなどでは当たり前にされていることです。ただ、仕事の性質や忙しさ、給料の高さや普段の仕事ぶりなどを踏まえ、「そこまで徹底する必要があるの?」という不満が出る可能性はあるでしょう。従業員の気持ちとリスクのバランスを取って判断すべきです。

   職場のネガティブ情報をネットに流されない最良の予防策は、不満の少ない労使関係づくりと、誠実な経営だと思います。現代のネット社会では、文字通り「人の口に戸は立てられぬ」ものです。仮に誰かがあることないことを発信しても、「そんなはずはなかろう」と思われるような評判づくりも大切です。

   とはいえ、昨今の「事件」は誠実な経営をしていても起こりましたし、普段の評判とは別に「まさかあの店が」と噂が広がりました。上記の努力に加え、「万一やった場合の厳しい対処」を採用時に確認し抑止力とすることも必要かもしれません。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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