始業前に出勤して朝食、新聞… これで「残業代」をもらっていいの?

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   伊藤忠商事が10月(2013年)から深夜残業を禁止し、始業前の「早出残業」の方を推奨する取り組みを始め、注目を集めている。

   遅刻なんてもってのほか、朝早くから出社して業務に備える――大変結構な姿勢にも見えるが、オフィスでやっていることが「新聞を読む」で、それで残業代が出る、となると印象は変わってくる。

「朝早い方が電車に座れます」と笑顔

   ――メーカーの本社人事です。当社ではタイムカードにより就業時間管理をしています。製造部門は工場の稼働に合わせた出退勤ですが、管理部門では就業時間よりかなり早く出社している者もいます。

   それ自体は仕事熱心でよいと思うのですが、出社するとタイムカードを打刻するので始業が早くなり、通常の終業時間に退社すると残業手当の算定対象となることがあります。

   先日、私がイベントの準備で早く出社した際に、いつも早朝出社しているというA君と出会いました。彼はサンドウィッチにコーヒーを口にしながら新聞を読んでいたので、「いつもこのくらいに出社しているの?」と聞いたところ、

「はい。朝早い方が電車に座れますし、オフィスで新聞もゆっくり読めます」

と屈託のない笑顔が帰ってきました。私は内心「これで残業手当をもらえるのかよ」と、複雑な気持ちになりました。

   もちろん、早朝から仕事をすることもあるでしょうし、朝の生産性も高いとは思います。ただ、このような働き方では会社として残業代をムダに支払うことになるし、発覚すれば他の社員から不公平という声も出かねません。

   同じように出社してから仕事以外のことをする人もいるようですが、朝食と新聞を済ませてから、タイムカードを打刻するよう指導した方がよいのでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
会社の指示なき早出出勤は「残業」と認めなくてよい

   会社の指示や事前申請なく勝手にやったものは、基本的に認められないというのが最近のセオリーです。就業時間前にタイムカードを押す場合には、早出の指示があったときだけというルールにした方がよいと思います。誰も管理していないところで、大して仕事もしていないのに残業代ばかり増加する事態に陥るおそれもあります。退職後に「残業手当不払い」などの思わぬトラブルを招きかねません。

   ただし早出には、仕事のエンジンが掛かりやすく、生産性があがるというメリットもあると思います。私も会社員時代に始業時刻の1時間前に出社をしていたことがありましたが、主に勉強するためだったので、上司から指示がない場合には残業申請はしませんでした。タイムカードの件を別にすれば、ある程度の早出は許容してもよいのではないでしょうか。

臨床心理士・尾崎健一の視点
退社時間を厳守したうえで「早出残業」のメリットはある

   早出によって生産性があがるという見方もある一方で、セキュリティ上、上司の具体的な指示なく無人のオフィスで時間を過ごすのは許されないというご時勢になりつつあります。仕事以外のことをするならオフィスに早出することは止めてもらい、ワークライフバランスの観点からも、仕事が終わったら早く退社するという原則にすべきです。無断の早出残業は、目に見えにくい過労を生むことにもなります。

   ただし、就業時間内にどうしても仕事が終わらない業務量があることが明らかな場合には、事前に上司の承認を得た上で、始業前に「早出残業」をするメリットもあると思います。深夜残業は生活のリズムを崩し、就寝直前まで活動することで睡眠の質を下げることになります。退社時間を守ることで、ダラダラ残業を防ぐ効果もあるでしょう。

「早朝出社して新聞読む」で残業代、は問題あり?
問題あり
問題なし
微妙
残業代なんて出ないし…
その他
尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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