「嫌いな取引先の仕事は断る」が話題に 「マスコミに取り上げられる」中小企業になる秘訣

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   中堅・中小企業の広報でポイントとなるのは、「ニュースの発掘(何が記事になるか)」、「ニュースリリースの作成」、「メディアへの橋渡し」の3つだ。中堅・中小企業の経営者は、大企業のように組織だっていないため、自分で何から何までしないといけない。

   例えば、新製品・新技術や新しいサービスを開発したとする。通常は、そのタイミングをつかまえて広報となるわけだが、営業に目が向いてしまう。カタログ・パンフレットの作成、展示会の出展、日々の営業…。気が付けば皆が知るところとなり、ニュースではなくなっている。

月に1回「夢会議」

ニュースリリースの作成も、どのように書けばよいか分からない。「売り込めばいいんだろー」と考えて、PR色が満載の文章となり、肝心のニュースがぼやけてしまう。メディアへの橋渡しに至っては、メディアの特性を理解していないことから、どうしたらよいのか分からないケースがほとんどだ。

   今回は、このうち「ニュースの発掘(何が記事になるか)」について取り挙げたい。モデルケースは、群馬県高崎市にある有限会社中里スプリング製作所。この会社は1950年設立、従業員数20人の町工場だが、2代目の中里良一社長が1985年に就任して以来、「マスコミに取り上げられる会社」を目指し、実際に多数のマスコミに登場する実績を挙げている。

マスコミが注目するのは、主に次の3点に集約される。

1.「嫌いな取引先の仕事は断る」。社長自身はもちろん、優秀な社員を年に1回表彰し、ご褒美として選べるのが「嫌いな取引先を断る権利」か、「社内の材料で好きな物をつくれる権利」。これまでに約50件の取引先を断った。
2.バネの規格化を209種類から始め、6820種類に。即日出荷で取引先を拡大。
3.月に1回「夢会議」を開き、全従業員が仕事や私生活の夢を語る。1989年に社長は「全都道府県に取引先を持つ」と夢を掲げ、取引先を4都県から全都道府県、約1400社に拡大した。

   広報の側面から分析すると、多くの中小企業が仕事の獲得に苦労している閉塞感の中で「嫌いな取引先の仕事は断る」「社内の材料で好きな物がつくれる」「夢会議」といったワクワク感、夢づくりを提供できたことが、メディアの耳目を集めた最大の理由だ。

   さらに注目されるのは、経営のセオリーをしっかり押さえていることだ。下請け体質から脱皮するために、バネの規格化、即日出荷というイノベーションを実行に移す。嫌いな取引先を断れることはマインド面で、また好きな物をつくれる権利は技術面で、それぞれイノベーションを後押しする。全都道府県への取引先拡大はマーケティングであり、顧客の創造につながる。ニュース性や話題づくりの提供も、その裏付けがしっかりしていないと記者は取り上げない。同社は、その点でも記者に安心感を与え、多くのメディアが注目するに至った。(管野吉信)

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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