2024年 4月 16日 (火)

広報パーソンとしての苦い経験 「逃げない、隠さない、ウソつかない」から目を背けた報い

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   マスコミ対応の極意は「逃げない、隠さない、ウソつかない」ことと「クイックレスポンス」だ。当たり前だろうと思えるが、不祥事をはじめとする危機対応のときに、これが貫けるかどうかはトップの指導力が欠かせない。

   私は、以前勤めた会社の広報室長として、苦い経験を幾度も味わった。この会社は映画ファンドなどを組成し、ヒット作も生んだが、部長がファンド出資金の一部である8000万円超を横領したほか、信託財産の流用や有価証券報告書の虚偽記載、新社長の解任、増資時に登場した架空の小切手など、不祥事が続出し、信託免許はく奪、東証マザーズ上場廃止となった。当時マスコミを賑わせたので、「あの話か」とピンと来る読者もいるだろう。

企業は社会に生き、お客様に生かされている

   当時のエピソードの中から、企業広報にかかわるものをひとつ紹介したい。

   資金繰りが綱渡りとなった局面で、管理部門や中小企業基盤整備機構(中小機構)との共同ファンドの責任者だった役員が急逝した。会社には警察から連絡が入り、その電話を私が受けた。警察ははっきりとは言わないものの、私は「自殺が濃厚」との印象を受けた。その後、私は役員の急逝に伴う対策会議の枠外に置かれた。通夜、葬儀にも参列することは叶わなかった。上場会社の現職役員の死去のため、当然ながらリリースにまとめて発表しなければならない。その内容は、社長が私にレクチャーした。死因は心不全。原因不明の急死ということだった。

   さて、リリースを発表したとたん、メディアからの問い合わせが数多く寄せられた。「病名は何か?」「自殺ではないのか?」「亡くなった病院はどこか?」。広報パーソンとしては、心証は自殺であるものの、会社の公式見解は心不全であるため、それで押し通すしかなかった。ただ、病院名はお教えした。病院が死因を明かすはずはないという読みもあった。

   会社が信用不安まっただ中のさなかで、急逝した役員。その訃報発表は「逃げない、隠さない、ウソつかない」であったとは思えない。個人の尊厳よりも、会社の信用不安拡大を恐れた発表になってしまった。広報の責任者としても、自殺を確認することができず、会社の見解を発表してしまった恨みがいまも残る。

   トップが「逃げる、隠す、ウソつく」を良しとしたこの会社は、社会の批判から逃げ続け、最終的に行き詰まってしまった。企業は社会に生き、お客様に生かされているのであるから、その代弁者であるマスコミから逃げたり、ウソをついたりしてはいけないのである。(管野吉信)

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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