本当の「グローバル人材」と、「グローバル人材もどき」の違い

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   グローバル人材という言葉が昨年(2013年)はよく流行りました。グローバル人材という言葉を使うだけで炎上するという、素晴らしいワードだったとおもいます。

   しかし、なぜこんなに炎上してしまうのでしょうか。グローバル嫌いの国粋系のかたのご意見は横においても、グローバル人材の定義がされていないというか、多くの方がそれぞれのイメージで捉えて語っているので、意見が噛み合いません。

日本人がアメリカにわたり、アメリカ国内向けの仕事をする

「グローバル」って何だ?
「グローバル」って何だ?

   そこで、世界中で、世界中の人材を使って展開しているグローバル企業(IBMやアップル、アマゾン、P&Gみたいな企業のことです)におけるグローバル人材の定義を書いておこうと思います。

   まず、みなさん、たとえば日本人が、アメリカにいって、アメリカのアマゾンで、アメリカ国内の倉庫の管理を担当していたとしましょう。

   これはグローバル人材でしょうか?

   たしかにアメリカに渡って仕事をしているので、グローバルに見えますね。

   もう一例、日本人がシンガポールにいって、日本人向けの翻訳サービス会社につとめたとします。日本語と英語を使います。これはどうでしょうか?

   グローバルっぽいけど、そうでもなさそう?

   さらに、立場を逆にしてみましょう。アメリカ人が日本にきて、英会話学校で講師をします。中国人が日本に来て、日本語でITの開発会社で働いています。これはどうでしょうか?これはグローバルではない?

   いろんな意見がありそうですが、実はこれら3つはすべて同じです。本質的なところでは一緒で、どれもローカル(現地向け)の仕事なのです。お客さんが現地で、働く場所も現地にいることが大事です。

   グローバルの仕事といった場合、これらのグローバル風の現地向けの仕事(ローカルジョブ)が多数混ざりこんでいるのが現実です。

世界中で同じ仕組を使うものを、管理したり、運用したり…

   では、グローバルな仕事、人材というのはどういうことでしょうか?

   最初の例にヒントが有ります。たとえば倉庫の高度な管理の手法やそれに基づいた物流といったものは、国によってやり方に違いが無いのです。例えば、アマゾンは、高度にIT化した倉庫と物流の仕組みを、全世界で全く同じ仕組で運用しています。アメリカの倉庫と、日本の倉庫では、仕組みに違いがありません。

   そう、こういう世界中で同じ仕組を使うものを、開発したり、管理したり、運用したりすることが、グローバルな仕事ということができます。

   倉庫のスタッフに直接目をくばったりする管理者は、現地にいて目を光らせている必要があるので、現地向けの仕事ですが、倉庫の管理システムを設計し、それを世界中で運用していくという仕事は、グローバルなものです。

   このようなタイプの仕事としては、物流、サプライチェーン、R&D、財務、マーケティング、ITなど、いわゆる本社が一括して行う仕事があります。

   もう一つは、複数の地域を統括するような部門で働くことです。例えば、シンガポールの本部から、アジア地域全体を見る。個別の国の業績や動向をみて、全体として、どうすればいいかの判断を下すような機能です。これも、グローバルな仕事だといえます。

   このような仕事をするには、多様な価値観や文化を理解し、多様性をマネジメントしながら、数字で成果を出すことが求められます。そういう人材がグローバル人材です。

   非常に簡単にいえば、多国籍の文化も考えも違うチームを率いて、トップレベルの複雑な経営問題を解決し、数字をつくれる人材です。

   さて、日本の会社のいうグローバル人材というのはどういうものでしょうか。

「日本と、現地の間をとりもち、その間の言葉や文化的差異をうまく乗り越え調整して、よろしく計らう調整役。現地の文化と、日本の文化の両方を知っていて、その翻訳・調整ができることが大事」

というものです。

ブリッジ人材とは

   たとえば、ブリッジSEという言葉があります。日本の顧客が発注主で、開発がインドだったりする場合に、その間をとりもって、日本のやり方と、インドのやり方のあいだでうまく調整してプロマネするような人のことをいいます。

   現地のひとをうまくハンドリングできることが求められる一方、日本本社の空気をよんでうまくやらないといけない。

   こういう人材のことは、一般的にブリッジ人材と呼びます。異なるやり方をブリッジ(翻訳)して調整する人のことです。

   中国進出、インドネシア進出、主に、「進出」や「外注」するときに必要となる人材です。

   日本で、グローバル人材が足りない足りないとさけばれているのは、このブリッジ型の人材のことをいっています。それはそうです。現地に精通して、日本の空気も読める特殊な人材がたくさんいるわけがないのです。

   一方で、日本の本社の方ではグローバルな人材は不要で、日本人の新卒採用された男子が長期的に特有の文化によってこれを勤めます。そこには、他国の人材や多様性が入り込む隙間はほとんどありません。(大石哲之)

大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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