「組織に寄りかからない」キャリアのつくり方 主語を「自分」で考えてみる

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   第2回で書いたように、MBAに来る学生の多くは転職や起業などキャリアチェンジを目的にしています。もちろん「もっとお金を稼ぎたい」という欲もあるのでしょうが、私より年下の若者たちが自分のキャリアビジョンを主体的に考えている、そして今の自分を省みて何が必要かを客観的に分析していることに驚かされます。

   夜な夜なバーで青臭い夢などを語らったりするわけですが、例えば5歳年下のある友人はキャリアについてこう語っていました。

あなたのキャリアの主語は「会社」ですか?

「発散型キャリア」と「吸収型キャリア」
「発散型キャリア」と「吸収型キャリア」
「大学の友人とeコマースに革新を起こす技術を開発したんだ。卒業後は仲間を集めて起業して成功したんだけど、事業を拡大しようとしたときにエンジニアばかりで全体を見渡せる人がいなくて上手く行かなかった。それで、外資系IT企業に行ってプロジェクトマネジメントを学んだ。今回MBAに来て学びたいのはアントレプレナーに必要な経営や財務の知識。卒業後はeコマース企業で経験を積んで、少ししたら以前開発した技術をブラッシュアップしてeコマースサイトを立ち上げようと思っている」

   他の友人も多かれ少なかれ「大目標」を持って自分のキャリアを設計していて、「自分は何て小さく考えていたんだろう!」と衝撃を受けたものです。

   MBAに出願する際には、「将来のゴールは何か」「なぜ今MBAが必要なのか」というエッセイを書くのですが、どうしても主語が「会社」になりがちでした。派遣だからという部分もありますが、会社の海外展開にマネジメントとして貢献したい、会社の成長のためにデジタルなど最先端のマーケティング手法を学びたいというように「会社」を主語にした目標はすらすら書けるのに、「自分」を主語にして書くのは大変難しい。

日本的「発散型キャリア」とアメリカ的「吸収型キャリア」

   もちろん最近は変化を見せていますが、長期雇用をベースとした日本企業で働いていると「Aという部署で○○をやって、B大学のMBAで△△をやって、Cという部署で××をやってきました。で、何だか色々できるようになったし、会社も成長した」という発散型のキャリア形成になりがちです。ゴールが「企業の将来の成長」と「そのためのマネジメントのポジション」になっていて、自分ではなく会社に力が貯まっていく、つまり会社の成功に自分のキャリアをほぼ全面的に託しているというモデルになっているのではないでしょうか。

   一方、MBAでアメリカ人や留学生は「自分のキャリアゴールは○○で、だからA社で△△を学んで、B大学のMBAで××を身につけて、C社で□□を達成したい」という話し方をします。つまり、ゴールになるのは「こういう人材になりたい」「こういう夢を達成したい」ということであって、キャリアの焦点が個人にいかに能力が蓄積されていくかにある吸収型のモデルです。

   企業側も、高い給与を払って踏み台にされるのではたまらないので、採用も真剣です。MBA1年生はMBAのキャリアサービス、内定を持っている2年生とともにレジュメ(経歴書)を徹底的に直したり「ケース面接」と呼ばれる「その場で戦略を組み立てる」訓練を延々としたりする。そしてしのぎを削ってインターンに採用され、夏休みの2か月~3か月もの長い時間をかけて会社と学生のフィット(相性)を判断するのです。

   では、私たちが学べる「キャリア形成術」とは何でしょうか。「海外に行く」「MBAで学ぶ」、それが目的化してしまってはあまりにも浅い。昨年夏休みに日本の本屋を覗いたら「とにかく海外に行こう」と喧伝する「グローバルマッチョ」な本が多数平積みになっていましたが、何でもかんでも海外に出れば道が開けると安易に思っている人があまりにも多い気がします。「自分が将来本当にやりたいことは何なのか」「そのために何が必要なのか」「今の仕事・会社を使って何を学ぶのか」「次にやるべきことは何なのか」「それはどこでできることなのか」。MBAはこういうことをじっくり考える時間を与えてくれますが、皆さんもたまには休日に時間を取って、「会社」が主語ではない自分のキャリアについても考えてみてはいかがでしょうか。(室健)

室 健(むろ・たけし)
1978年生まれ。東京大学工学部建築学科卒、同大学院修了。2003年博報堂入社。プランナーとして自動車、電機、ヘルスケア業界のPR、マーケティング、ブランディングの戦略立案を行う。現在は「日本企業のグローバル・マーケティングの変革」「日本のクリエイティビティの世界展開」をテーマに米ミシガン大学MBAプログラムに社費留学中(2014年5月卒業予定)。主な実績としてカンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバルPR部門シルバー、日本広告業協会懸賞論文入選など。
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