「居酒屋甲子園」へのブラック批判に不満 「夢もってがんばっている連中の邪魔をして欲しくない」

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   先日、NHKテレビ「クローズアップ現代」で居酒屋甲子園が取り上げられました。居酒屋甲子園とは居酒屋勤務の従業員活性化策として、彼らが自店の想いや取組みを発表し、日本一輝いている店舗を決定するというものです。しかし同番組では、この活動が従業員を劣悪な職場環境に慣れさせるためのブラック化の手段であるかのように報じられたのだとか。

   私は残念ながらこの番組を見逃していたのですが、居酒屋を4店舗経営する知り合いのN社長が番組放映から数日後、その扱いに疑問を感じた様子で私のところに電話をかけてきてくれ、詳しく内容を聞くことができました。

「体育会系管理も必要」

居酒屋には居酒屋の流儀が…
居酒屋には居酒屋の流儀が…
「あれは業界に対する先入観がひどすぎる。うちは居酒屋甲子園には参加していないけど、似たような管理はやっている。居酒屋の従業員は、世間が思うほど甘ちょろい考えで管理できるような連中じゃないから、体育会系管理も必要。それを大手マスコミのエリート感覚でイコールブラックだみたいに扱われるのは納得がいかないね」

   N社長は40代後半。若い頃は素行が悪く高校を中退し自身は家を出、生活費を稼ぐためバイトで入った居酒屋のスパルタ教育の下で更生して、店主の支援を得て独立。最初の店があたって順調に店舗を増やしつつ、自身も同じような境遇の若い連中を社会人として一本立ちさせてやろうと、居酒屋という職場をはみ出し気味の若い連中の教育の場にできたらと意識しているのだとか。しかし、この業界共通の問題とも言えるスタッフの定着率はなかなか改善しないのが現実のようです。

「体育会系のノリで、理念の唱和、大きな声での挨拶、個々人の目標を発表させることによる達成意識の徹底をはかっているのは、まさに一筋縄でいかない居酒屋スタッフの特性ゆえ。もちろん、社労士の指導もあって法は守れと現場に伝えている。雰囲気に合わない者、ついていけない者が去っていくのは、どこの会社でもある企業風土との相性の問題だから仕方がない。でもあんな番組をやられたら、一層定着率が下がったり応募が減ったりしないか悩ましいよ」

教育の場としての職場と独立支援

   確かに仕事というものは業界ごとに全く違います。それとも関係して、働いている人たちの特性もかなり異なります。私も番組放映の翌日以降ネット上で盛り上がっていた "居酒屋甲子園ブラック批判"に「なるほど確かに」と思ったりもしたのですが、N社長の話を聞いて番組の視点は、N社長自身が体感してきたような居酒屋という職場の特性を考慮していない特定の価値観にとらわれすぎているような気がしました。それを踏まえて、次のようなアドバイスをさせてもらいました。

「大切なことは、まず何より法令違反が起きないように気をつけることです。これは社長の意識や言葉上の指示だけではなく、管理者、特に権限のある店長クラスが無理な勤務体制をスタッフに強要していないか否か、そこを十分管理することが大切。辞めたスタッフによるネット上の書き込みは、ほとんどがそのたぐいですから。その上で、マスコミやネット上の業界批判はあまり気にせず、信念を持って突き進むことです。あとはいかにその信念を見える形にしていくかですね」

   社長は私の話を聞いて、実は店長の一人をのれん分けで独立させる考えがあり、近々実現したいという考えを話してくれました。教育の場としての職場を経てスタッフの独立を支援し実現させる、これはまさに目に見える形として社長の信念を表現する最高のやり方です。

   「特定の立場に立った常識だけでブラックだなんだと言って欲しくないし、先入観で夢を持ってがんばっている連中の邪魔をして欲しくないな」と話すD社長に、本当にブラックとは無縁な経営者であると確信させられました。N社長の居酒屋チェーンのスタッフ定着率は、のれん分けを機に上がっていくのではないかと思います。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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