2024年 4月 19日 (金)

経営トップのロマンを形に 広報戦略の近道とは

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   経営トップのロマンを形に──。中堅・中小企業の広報戦略を描くときには、それが近道と説明してきた。そもそも経営者は、起業の段階で「スキルやネットワークを活用して、社会のお役に立ちたい」とか「時流を先取りして、顧客ニーズをいち早く取り込みたい」といった理念があったはずである。それが、だんだん日々の忙しさの中で、彼方へ遠ざかり、目先の収益を追うようになってしまう。

   しかし、ニュースとは社会や読者へのインパクトであるから、彼方へ行きかけたロマンをもう一度、引っ張り出して、社会と向き合い、形にしていく過程で生まれるケースが非常に多い。

チェーンストアのITを支える熱意

   ガルフネット(東京都江東区)の石川純一社長は、ロマンを形にし続けてきた代表的な人物といっていいだろう。石川氏は1982年にNECに入社。大手衣料品チェーンのIT(情報技術)システムを担当した。POS(販売時点情報管理)端末の導入を検討していた同チェーンは、1台280万円のPOS端末を「40万円にしろ」と迫ってきた。無理と言っても「余計な機能はすべて省けばいい」と反論され、知恵を絞って納品に漕ぎ着けた。石川氏はその後も業務支援システムなどの納入で、同チェーンの成長を後押しし、それらの経験を生かして1994年にガルフネットを設立した。

   居酒屋、ファストフード、小売り・物販などのチェーンストア向けにITサービスを提供するガルフネットの得意先は白木屋、吉野屋、松屋フーズ、チヨダ、ポイント、マックハウスなど有名ストアがずらりと並ぶ。顧客は350社、計5万店を超える。多店舗展開企業のITはガルフネットに支えられている、といっても過言ではないほどだ。石川氏のロマンは、チェーンストアに特化して、得意先の売り上げと利益を上げ、コストとロスを減らすこと。このためにIT資産を流動化し、ソリューションとして一括提供し続けている。

   例えば、ガルフネットが提供するITプラットホームは、本部と店舗に必要な業務機能をフルパッケージ化している。「ネットワーク」で本部と店舗をつなぎ、「業務システム」で売り上げ・勤怠・在庫棚卸・受発注などの損益管理を行い、「コミュニケーションツール」で情報交換を密にし、「システム運用」で店舗の日次会計データを集計して経営データに加工するといった具合だ。流通企業の売り上げに対するIT投資率を見ると、一般に1~2%のところ、ガルフネットの得意先は平均で0.2%と、大きく異なっている。

超硬金属を髪の毛の細さに 金属スリット加工に人生かける

   仲代金属(東京都足立区)の安中茂社長は、金属を切ることに人生をかけてきた。1976年の会社設立から40年近く、ひたすら金属を切ってきた。そのための専用機まで自社開発し、最も切りにくいとされるアモルファス合金を髪の毛の細さに切ることに成功した。「1000分の1ミリ」レベルの超精密を実現して、最大限のパワーを引き出す四角線コイルを開発した。これらは、電子精密機器の小型化に欠かせない技術となっている。

   安中社長が現在、力を注いでいるのはスマートフォンや自動車、医療機器、航空機などに使われるリチウムイオン電池の発火事故防止。リチウムイオン電池の電極から外部に電気を取り出す端子には高純度のニッケルやアルミニウムが使われているが、「100分の1ミリ」レベルの切りムラや湾曲が過放電による発熱・発火事故を招いてしまう。そのため、約4年をかけて切りムラや湾曲を「1000分の1ミリ」レベルに抑えることに成功し、2013年12月にサンプル出荷を始めた。この1ケタの違いは大きく、二次電池メーカーからかなりの引き合いが寄せられている。

   ガルフネットは日経産業新聞、仲代金属は日刊工業新聞がしばしば記事を掲載している。(管野吉信)

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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