毎年就職ランキングが発表されると、学生は保守的になったとか、役に立たない人気ランキングだとかいろいろな意見を大人たちが言うようになります。たしかに、わたしもこのランキングはほとんど役に立たないとおもうのですが、それでもたったひとつだけ役に立つことがあるとおもいます。それは衰退していく企業を知るということです。衰退に向かうサイクルの途中にある?人気企業と「いい企業」の関係とは就職ランキングは、学生が考える、今最も安定していてピークにある企業が並びます。それは逆に、成長期を終え、事業は安定し、徐々に衰退に向かうサイクルの途中にある企業ともいえるのではないでしょうか。例えば、20年前の人気企業ランキングの結果をお教えします。1993年の文系ランキングです。1位: ソニー(笑)2位: 東京海上3位: 全日本空輸(ANA)4位: 三井物産5位: 三菱商事6位: 三菱銀行7位:NTT8位: 日本航空(JAL)(笑)9位: 松下電器産業(パナソニック)(笑)10位: 伊藤忠商事あれ?まずは1位の企業が今では業績不振にあえいでいますね。さらに、8位の企業は倒産してしまいました(公的支援を受け再建)。9位の企業も経営が厳しいと伝えられています(先ごろ「急回復」したそうですが)。「衰退」予想のバロメーターとしては、なかなか素晴らしい結果だとおもいます。なにしろトップ9つのうち3つまでが、今では大変厳しい状況を迎えてしまったのですから。1993年当時に新卒で入社したひとは、現在、44-46歳位になっているはずです。ビジネスパーソンとしてキャリアの絶頂期を迎えるはずの大事な時期に、これ等の企業でリストラの可能性の恐怖に怯えなくてはいけないというのは、不幸なことだとおもいます。キャリアの絶頂期と、会社の絶頂期が重なるように成熟した企業では、若いうちは上が詰まっていてなかなか責任がある仕事をまかせてもらえない。一方で、40代の大事な時期に会社が傾いてしまうこともある。職業人の人生としてハードモードになることは間違いありません。本来40代のキャリアの絶頂期と、会社の絶頂期が重なる、そういったキャリアがベストです。となると、20年先に絶頂期を迎えるであろう企業を選んで入社するというのが大事なのかもしれません。ちなみに今年のランキングを見てみましょう。2014年のダイヤモンド社の企業人気ランキング(文系男子)1位 三菱商事2位 住友商事3位 三菱東京UFJ銀行4位 伊藤忠商事5位 東京海上日動火災6位 丸紅7位 みずほフィナンシャルグループ8位 三井住友銀行9位 三菱UFJ信託銀行10位 三井物産偏よりすぎすね・・・。商社と銀行しかありません。これだけ偏ったランキングは私の知る限り初めてです。しかし、これだけ偏りがあるということは、学生の人気が集中しているということで、将来の「衰退」予想の的中率も高くなりそうな気がします。こうした、仕事選びや就職のヒントに関しては、拙著『英語もできないノースキルの文系学生はどうすればいいのか?』という電子書籍に考えを纏めています。(大石哲之)
記事に戻る