2024年 4月 24日 (水)

メンテナンス費用「水増し」の巧妙手口 こうして2億円超が消えて行った

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異例取引にこそ不正リスクあり

   そのような不正をすれば、会社側や病院側のチェックですぐに発覚しそうなものだが、なぜ、7年間も見つからずに続けられたのだろうか。その疑問に答えるキーワードは「例外運用」「マイナーな業務」「担当者の長期固定化」である。

   A社の発行する請求書は、原則として、本社の管理部門が基幹業務システムから一括出力し、各取引先へ直接送付する。そのため、営業所の担当者が請求書を改ざん、ねつ造できる余地はない。しかし、一部の取引先については、従来からの慣行や要望などにより、各営業所で請求書を個別に発行することが例外的に認められていた。B病院は例外運用先であり、Cは営業所の端末を使って請求書を改ざん、ねつ造できたというわけだ。

   また、保守点検や修理業務は、A社全体の売上に占める割合が約2%とマイナーな分野であり、緊急対応が求められることも多かったため、「柔軟な」事務処理が容認される傾向にあった。そのことも、Cにやりたい放題をさせてしまう状況を助長したといえる。内部監査の対象にはなっていたが、形式的なサンプリング点検が中心で、取引先や業務委託先への聴き取りや現場の実査などは特に行われていなかった。

   「異例取引にこそ不正リスクあり」と考え、例外運用は極力なくすとともに、認める場合には全件厳しいチェックの対象とすべきである。また、請求書不正は、請求側と支払側の社員が共謀して行われる恐れもあるため、取引先へのヒアリングも有効な不正対策になる。

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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