「ブラック」と呼ばれるかどうかは社長次第 厳しい業界内でもこんなに違う

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   先日、知り合いのご紹介で老人施設を運営する新進気鋭R社のO社長とお近づきになる機会を得ました。話をするうちに、たまたま共通の知り合いがいたことが分かり、思いがけず話が弾みました。

   O社長は、業界準大手S社のナンバー2としてカリスマトップと共に長年組織を牽引してきましたが、人を巡る管理方針の食い違いから4年前に袂を分かって独立しR社を設立。現在6か所の施設を運営。運営スタイルが固まったことから、この先3年で約40施設にまで増やす計画でいると、事業の見通しを熱く語ってくれました。

使い捨て労務管理に強い不満

社員、一人ひとりが「花開く」には…
社員、一人ひとりが「花開く」には…

   何よりも驚いたのは、会社の規模や歴史に比べた社長ご自身の人脈の豊富さです。先の共通の知り合いも上場企業のトップなのですが、同社の顧問やアドバイザーには地元だけにとどまらない政財界の重鎮がズラリと名を連ねており、社長の人望の厚さをうかがわせるに十分でした。

   私の関心事は、そんなO社長がS社と袂を分かった具体的な理由とそれを受けて設立したR社のS社との管理方針の違いです。これまでも、老人施設の運営企業を複数見聞きする中では、この業界はとかく現場を疲弊させる利益追求型の経営者が多く、就労環境はおしなべて厳しいのです。S社もまたそのような評判を耳にしていましたからその実態はだいたい想像がついているのですが、そこをどう変えようと取り組んできたのか興味津々です。

「一言で言って、組織が大きくなるにつれてひどくなるS社の使い捨て労務管理に我慢ができなくなってきましてね。人にサービスを提供するビジネスで、提供するスタッフが気持ちよく働けないなら、良いサービスの提供なんてできるはずがないんです」

コミュニケーション役として動きまわる社長

   そう言うと社長は一言、「大関さん、現場をご覧になりますか?」と私に提案しました。恐らく現場を見てもらえれば、他の施設と自社の違いを分かってもらえる、そんな自負から発せられた一言であると私は理解し、その申し出に応えることにしました。

   数日後約束の時間に同社の施設を訪問すると、まだ社長は到着前でした。しばらくして社長が登場すると、私への挨拶もそこそこに、職員一人ひとりに笑顔で話しかけます。

   管理者的な男性職員には、

「○○くん、がんばってますか。体は大丈夫かい。何かあったらいつでもすぐに相談するんだよ」

   女性ヘルパーさんには、

「××さん、でしたね。分かります私のこと。どうですか、困りごとはないですか。困りごとは所長に相談して、ラチがあかないなら私に連絡くださいね」

   さらには、入居のお年寄りを捕まえて、

「いかがですか、私は本社の者ですけど、快適ですか。職員は良くしてくれていますか。ご要望は遠慮なく申し出てくださいね」

   こんな調子で、O社長は小一時間施設内をコミュニケーション役として動きまわり、気が付いた点を事細かにスタッフに指示します。時間に遅れたのも、実は他の施設で同じように現場コミュニケーションをしていたのだと。そんな社長の様子を見て私は、以前とある老人施設の現場ヒアリングで耳にした現場女性スタッフの言葉を思い出しました。

「社員に元気に働いてもらうことが私の使命」

「使命感をもってこの仕事に就いたのですが、会社がしっかりと見てくれているという実感がなく心が折れる寸前です」

   彼女はほどなく会社を辞めました。使命感だけではなかなか続かない、老人施設の過酷な労働環境の実態を垣間見た瞬間でした。

「私の目標は、業界で一番社員がイキイキしている会社を実現し、それをもって業界で一番サービスの質が高い会社を実現し、さらにその上で業界で一番経営内容のいい会社をめざしたいのです。だから、社員に元気に働いてもらうことが私の使命です」

   O社長の人望が厚い理由がよく分かりました。ブラックと揶揄される企業が多いこの業界ですが、ブラックと呼ばれるか否かはやはり社長次第ということであると改めて実感させられた次第です。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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