74人中73人が脱落する就活「超難問」 「一気に絞り込む」ポイントとは

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   インターネット生命保険会社のライフネット生命が、採用活動で新卒者向けに出している課題の内容で注目されている。「重い課題」と題しているように、簡単には答えが見つかりそうにないテーマを掲げている。

   提出する形式や枚数は自由だが、就活生にとっては文字通り重くのしかかるようだ。過去には、同社をエントリーした全応募者で課題を提出したのは、74人に1人の割合だったという。

考えるプロセスそのものを問う

難しいな…
難しいな…
「国政・地方のいずれの選挙でも、20代の投票率は全世代の中で最も低くなっています。20代が選挙に行かない理由とそのために起きる問題、それに対して20代はどうするべきか、次の設問に従って考えてください」

   2015年度採用のふたつの課題のうち「A」の内容だ。設問は、「ほかの世代と比較して20代の投票率が低い理由を、データを用いてその背景とともに説明してください」、「20代の投票率が低いために、すでに起きている現象と将来起きうる事象について説明して下さい」「投票しない理由として『選挙に行ってもどうせ自分たちの意見は反映されない』という声があります。では、20代の意見を政治に反映させるためにはどうしたらよいでしょうか。解決策を3つ考えて提案してください。なお、予算・法令・制度などの制限はすべて取り払って考えてかまいません」の3項目。課題「B」もやはり、一筋縄ではいかない。

   ネットでちょっと調べてコピペしたような、付け焼刃の論文では太刀打ちできないだろう。ライフネット生命のウェブサイトには、「考えるプロセスそのものを問う」とある。決まった答えのない設問で、求められるのは自由な発想力、分かりやすく本質的な内容をまとめる力、そのために徹底的に考え抜くことだという。

   これまでも、同様の課題を新卒者に与えてきた。同社の出口治明会長兼最高経営責任者(CEO)は、2013年11月26日付の日経ビジネスオンラインのコラムで、2013年度の採用について書いている。同社を希望してエントリーしたのは8271人だったが、実際に課題を提出したのは111人にとどまった。実に74人に1人しかクリアできなかったわけだ。課題を精査した後、段階を踏んで採用審査を実施した結果、合格したのはわずか1人だ。

   選考過程は確かに厳しい。実に8000人以上が「重い課題」にはね返され、勝負の土俵に上がる前に断念してしまったことになる。

「考える事」とビジネスパーソンに必要な資質

   ライフネット生命の「新卒」の定義はユニークだ。「学生、既卒者、留学生問わず、入社年の4月時点で30歳未満の方であれば、就業経験があっても応募資格があります」としている。既卒者の場合、他の企業は応募すら認めないケースも多い。他社の選考からこぼれた優秀な人材を確保しようという狙いだ。ただしこの場合、応募者が増えるのは容易に想像できる。そこで、重い課題にこたえてもらうことで一気に絞り込むのだと、出口会長は先述の日経ビジネスオンラインの記事で説明している。

   ファイナンシャルプランナーの中嶋よしふみ氏は、5月20日付のブログで「重い課題」について触れた。1年前の課題に実際に挑戦したという中嶋氏。2015年度の2問の課題では、「B」について、「あまりに難しいので、一度面倒になって考える事をやめてしまった」と告白した。ただ「この面倒臭さも課題の意図ではないかと思う。『考える事』が面倒臭い人は、ビジネスマンとして必要な資質を決定的に欠いているからだ」とみる。さらに、このような『難し過ぎる課題』は自ら学び考えながら仕事に取り組める人材だけに来て欲しいという意味では、かなり強力なフィルターと言えるだろう」と続けた。

   ブログでは、「B」の設問3点のうち最初のひとつについて考察し、最後に「仕事を疑似体験出来るという意味で、非常に良い問題」と高く評価した。

   ツイッターでも、超難問の課題に対しておおむね好評だ。「こういうトンチじゃない難しい課題というのはよいと思う」という意見もある。近年、米グーグルやマイクロソフトが採用試験に取り入れた「フェルミ推定」が話題を集めた。「マンホールのふたはなぜ丸いのか」「ビル・ゲイツの浴室を設計するとしたらどうするか」といった、少々突飛な質問に対して手持ちの材料でどんな回答をひねり出すかをみるのだ。ライフネット生命の「重い課題」は、こうしたフェルミ推定とも一線を画していると言えよう。

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