2024年 4月 26日 (金)

社長主導のワンマン会議が変わった 「ワールドカフェ」方式で活性化

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   前回、「会議は企業文化を体現する」すなわち「会議が変われば会社が変わる」というお話をしましたが、今回はその関連で具体的な事例をもう1件ご紹介します。

   精密機器部品メーカーB社のS社長は、発明家的な技術者の創業社長で超ワンマン経営でした。「技術者が中心の会社で社員に積極性がなく、もっと社内を活性化できないか」。そんなご相談をいただき、お手伝いをさせていただくことになりました。

ほぼ命令に近い形で会議は終結

4人一組で…
4人一組で…

   社内活性化のお手伝いではたいてい、企業文化の根幹である会議運営を見させていただくことからスタートするのですが、B社においては議長を務めるS社長のワンマン会議運営が一目で分かりました。そこで、会議改革をすべくファシリテーター(中立的な進行役)を務めさせていただくことにしました。

   まずは、役員、管理者クラス十数名が出席し企業運営の基本的方針を決める経営会議の進行をお預かりし、この会議がなるべく社長の独断の場にならないようにと、出席者に極力均等に発言を求めるような会議の流れをつくろうと努力しました。しかしながら、結果はほとんど効果ありませんでした。

   私から発言を求められた社員は、ほとんどが「特にありません」、もしくは一言二言あたり障りのないことを言って終わり。会議が重要局面に差しかかると、社長が決定案と思しきものを皆に話をして、ほぼ命令に近い形で会議は終結するのでした。

「『走りテーター』だか何だか知らんが、会議は全然走らないな。君がやろうとしていることは、時間の無駄じゃないのか。口数の少ない技術者連中を会議で活性化させるなんて土台無理だろう。会議以外の活性化策を考えるべきじゃないのか」

   私がファシリテーターを務めた初回会議終了後に、社長からはこんな辛辣な評価をいただきました。

まず、4人一組で会議チームを組んで意見を自由に出し合う

   タダでさえ口の重たい技術者の皆さん。そこに持ってきて超ワンマンな社長。社長のリーダーシップを活かしつつ、いかにして社員が意見を出しやすい環境づくりをしてあげたらよいのか、非常に悩ましい状況であることは確かでした。しかし会議こそ企業風土の基本ですから、私は会議にこだわりました。

   そこで会議メンバーに個別で話を聞くことにしました。皆の意見を集約すると、予想通り「意見を言ったところで相手にされない」「余計なことを言って、社長ににらまれたくない」「結局社長が決めるのだから、早く会議を終わらせた方が我々もありがたい」といった、会議に臨むスタンスとして、実に後ろ向きな姿勢ばかりが感じられました。

   しかしよくよく膝を交えて聞いてみると、彼らの共通項として出てきたのは「言っても始まらないから言わないが、意見はある」という姿勢。技術者ならではの論理的な思考がそうさせるのでしょう。これを活かさない手はありません。個別で意見を言うから社長が相手にしないのなら、嫌でも相手にせざるを得ない会議の進め方をすればいい、私はそう考えました。

   ワールドカフェという会議方式をご存じでしょうか。4人一組で会議チームを組んで、カフェでの雑談のような雰囲気の中でテーマに沿った意見を自由に出し合う。次に各チーム1人を残してメンバーを入れ替え再度意見交換する。最後にまた元の4人に戻って他のメンバーとの意見交換結果を踏まえて各チームの意見をまとめる、そんな3ラウンドのフリートーク方式の会議です。

「こんなに前向きな意見が出るようになるとは驚いた」

   B社経営会議で議長である社長を除いたメンバーで、議論が必要な重要議題ごとに毎回メンバーの異った4グループ制のワールドカフェを実施し、4つのグループからの意見を全体会議で発表させるやり方に移行させました。

   ワールドカフェでは自由なムードの中、皆が議論を楽しみ各メンバーから驚くほどたくさんの建設的な意見が出されました。それを受けた全体会議では、社長は社員個人ではないグループとしての前向きな意見を聞いて、自分の意見をただ押し通すのではなく皆の意見を取り入れながらいかに自分が考える落とし所に近づけるか、といった姿勢に変化し、その場で社員とコミュニケーションをかわしながら議事を進めるようになったのです。

「会議の進め方を変えるだけで、こんなに前向きな意見が出るようになるとは驚いた」

   S社長もびっくりのワールドカフェ効果に、今度は各会議にワールドカフェを導入して活性化しろとトップダウンで指示したいと言いだしたので、「ワールドカフェは強制力をもったら効果は半減」とそれは止めました。

   それでもB社ではその後、これをきっかけに社内各所で自主的にワールドカフェ方式のミーティングがたくさんもたれるようになり、「ミーティング・スペースをもっと作って欲しい」という声があがるところまで活性化が進んだようです。

   ワールドカフェはあくまでひとつのヒントですが、意見が出ない会議の進め方を変えるだけで会社は確実に変わるのです。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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