2024年 4月 25日 (木)

「仕事ができない」駐在員でも厚遇すべきか

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   駐在員と、現地採用の間の格差の話題がまたネットをにぎわせている。

   給与が2倍ちがうとか、昇給率が著しく違うとか、運転手付きの車がつくとかつかないとか。

   待遇面だけではなく、現地採用社員はデータ入力などの事務作業をするが、駐在員は現地の部下をもち、なにもないところからつくり上げるというダイナミックな仕事をする、とのこと。

一番の問題は、「身分制度」化

中国の現地法人の場合は...
中国の現地法人の場合は...

   駐在員と現地採用の格差の問題はいろいろ取り上げられているが、格差自体は問題ない。そもそも役割が違うのだから。

   データ入力の事務作業社員と、現地のトップが2倍の格差ですむなら、むしろトップのほうが薄給といってもいいくらいだ。仕事によって、10倍、20倍の格差が生じてもおかしくない。

   問題は別のところにある。2つあげよう。

   一番の問題は、駐在員が身分制度になっていることだ。現地トップとしてやってきて、会社を立ち上げたり、拡大したりしていくような役割なら、その重要性はだれもがわかるだろう。十分に経験があり、リーダーシップもあるひとがトップとして派遣される。

   しかし、駐在員の中には、若手で十分に経験を積んだひとではなく、語学も、マネジメント能力も不足している人を、たんなる人事ローテーションの一環として派遣する場合がある。役割は本社との調整役だ。こんな悠長なことをやっている企業はいまでは絶滅寸前だが、それでもそういうタイプの駐在員は存在する。

社長も現地採用にする動き

   そして、こういう駐在員は、現地の中堅社員よりも仕事ができない。それにもかかわらず、駐在員だからということで「身分」的な給与と待遇が保証されている。役職や役割に応じた報酬制度になっていない。これは日本国内でも、本社か、子会社かということに置き換えてみたら理解できるだろう。

   2番めの問題は、現地採用の人間が、現地トップになるキャリアパスが無いことだ。トップのポジションは、常に駐在員のポジションで、さらに人事ローテーション上、2、3年で交代する。現地のスタッフは、日本人、現地の国のひと問わず、トップになる道は存在しない。これでは、スタッフのやる気がでるだろうか。

   これは優秀なスタッフが採用できないという問題にもつながる。

   もちろん、なぜこうなってしまうのか原因を考えなくてはいけない。ひとつは日本の硬直した人事制度に起因するが、もうひとつはトップを任せられる人材層が薄いということだ。ただし、状況も変わりつつある。現地のトップを駐在にせず、社長も現地採用にする動きだ。他社のトップを引き抜いてくる場合もあれば、現地のひとで、米国やシンガポールで教育をうけ外資系で働いていたひとを引き抜く場合もあるという。

   すでに、中国では、社長は中国人にするというのが常識になってきている。そして給与は日本の駐在員よりはるかに高く、相場は年収1200万円以上だという。(大石哲之)

大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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