会社が指定した「長期休暇」 必ず従わないとダメですか?

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   現在、ちょっと遅めの「夏休み」中です。航空チケットが高い夏本番を避けて、今の時期にお休みをもらい、海外へ行ってきま~す――こんなメールが友人から届き、うらやましいような、腹立たしい(?)ような気分になっている人もいるかもしれませんね。

   この「友人」のように、夏休みなど長めの有給休暇の時期を比較的自由に本人が選べる会社もある一方、中には会社側が有休をとる時期や期間を指定してくるケースもあります。「指定」期間以外ではいけないのか、不満を持つ人も少なくないようで、今回は次のような「相談」について考えてみたいと思います(実際の例とは、一部を変更しています)。

会社指定の有休期間に、大切な仕事が入っている...

別の時期にバカンスを楽しむつもりだったのに...
別の時期にバカンスを楽しむつもりだったのに...

――人材紹介会社で働いています。先日、社内で指定された日程3日間を一斉に有給休暇申請するようにと通知がでました。

「有給取得率が悪いので、今年は夏休みを8月13日~15日と指定して有休申請するように」

   1か月前に通知がでたとはいえ、業務が入っていたので休むことはできないし、後日別日で休もう、と思い申請をしないでいました。ところが......

「A君、有休の申請の件だけど、早めに提出するように」

   そんなことを考えていた矢先、部長にこう声をかけられました。

   「有休申請の件なのですが、どうしてもはずせない仕事があるので、別日に有給申請してよろしいでしょうか」と相談したところ、

「はずせない仕事?まだ期間もあるし、調整して有休をとってくれ。A君だけ他の日で調整すると、他にも同じような人がでてきて対応しなければいけないだろ」

   さらに、

「時季指定の一斉取得なのだから、合わせなさい。私だって合わせるのだから自分だけ別日なんて、わがまますぎるよ」

と言われてしまいました。

   たしかに周りの同僚や先輩方は、会社の通知に従って有休を申請していました。ですので、仕方なく僕も指定された期間(8月13日~15日)は、有休を申請しましたが、どうしてもその日の仕事をずらせなかったので仕事をしました。サービスで有休を使った気分です。

   会社側からの今回のような有休の時季指定には、必ず従わなければいけないのでしょうか。――

岩沙弁護士の「ホホウ」な解説 「まずは労使協定をチェック」

   なるほど。それは大変でしたね。いくつか確認事項がありますが、「指定された日以外の有休」の取得について、まだまだあきらめない方が良さそうですよ。

   ここでポイントとなるのは、「計画年休」という制度です。労使協定を締結したときは、5日を超える部分について、会社が強制的に有給休暇を取得させることができるようになっています。

   日本では、職場への気兼ねなどから、有休の取得率が極めて低い状況にありました。そこで、取得を促進するためには、職場で一斉に有休を取得することが効果的であるとして、計画年休制度が設けられたのです。

   具体的には、労使協定で休暇日が具体的に定められた場合や、労使協定で定められた手続きで休暇日が特定されれば、当該休暇日が年休日となります。しかも、反対の労働者であっても、その日を年休日とせず他の日を年休日と指定することができなくなります。つまり、有休だからと言って自分だけ別日に申請をして休もうと思ってもできないのです。

   ただし、労働者をその協定によって拘束することが著しく不合理となるような特別の事情が認められる場合などは労使協定が無効となります。


   今回のケースは、社内で3日間を指定され一斉に有休申請するようにとの通知がでたとのことなので、会社が計画年休制度を利用している可能性がありますね。労働組合に行って計画年休に関する労使協定を閲覧し、日数や設定期間を確認してみてください。そのような労使協定がなければ、会社の指示に従う必要はありません。

   また、仮に計画年休に関する労使協定があったとしても、あきらめてはいけません。Aさんのケースの場合、指定された休暇日にどうしても外せない仕事があるとのことなので、会社に対し、例えば、「指定された日に仕事を休んでしまうと、その日しか都合が合わない顧客との面談に支障がでますし、外部への連絡が滞り契約に影響が出てしまう可能性があります」と伝えて交渉してみてはいかがでしょうか。

   そこまで言えば、会社側は納得してくれると思います。それでも会社が計画年休を主張してきたら、指定日が年休でないことを確認する内容の裁判をする必要がありますが、あまり現実的ではありませんね。まずは冷静に、「顧客との面談」の重要性を上司に納得してもらいましょう。(文責:「フクロウを飼う弁護士」岩沙好幸)


   最後にポイントを2点にまとめると、

(1)計画年休を定めた労使協定がなければ、会社の指示に従う必要はない
(2)労使協定によって拘束することが著しく不合理となるような特別な事情が認められる場合は、計画年休制度は無効になる
岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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