就活ナビの赤裸々な実態 「昔はよかった」と嘆く理由

印刷

   大学生が今や就活時に必ず使うもの、それは就活ナビサイトです。企業情報が就活ナビサイトに掲載されていて、学生は検索したり、説明会・選考の予約をしたりする際に活用します。

   学生は無料で登録、利用できますが、企業は就活ナビサイトを運営する就職情報会社に掲載費用を支払います。基本料金は数百万円、これにオプションだ何だと払っていけば1000万円を超えることも珍しくありません。

リーマンショック以前は、就職情報会社はどこも強気だった

昔の就活と、今のシューカツ。違いは...
昔の就活と、今のシューカツ。違いは...

   オプションとは、ブックマークを促す勧誘メールや採用担当者ブログなど。あれも学生からすれば無料で閲覧できるもので、メールなどはうざったいくらいだと思う方もいるでしょう。実はしっかり費用がかかっています。

   宣伝がやたらと派手なこともあり、学生は儲かっている業界と思い込む方もいるようです。

   確かに2008年のリーマンショック以前は企業側が採用活動(学生にとっての就職活動と逆)にかなり費用をかけていました。そこで就職情報会社はどこも強気。クライアントである採用担当者に対しても商談では偉そう、とまでは言いませんが、そんなにディスカウントすることもありませんでした。

   しかし、リーマンショックで企業側は採用者数を抑え、それに比例して就活ナビサイトへの掲載費用も抑えるようになります。そして、2012年頃から採用者数を増やした売り手市場に転じても、掲載費用の抑制は変わりませんでした。

   企業からすれば、就活ナビサイトに多額の費用を払う価値があるのか、疑問に思うようになったからです。もちろん、学生だけでなく企業にとっても就活ナビサイトは便利です。それに、就活ナビサイトに変わるシステムが出てきているわけでもありません。ただ、多額の費用を払って学生に無理に告知してもそこまで企業にとって欲しい学生が採れるわけではありません。

   企業側がこのことに気づき、就活ナビサイトへの支出抑制を続けるようになりました。

撤退を発表する会社も

   たまらないのは就職情報会社です。しかも2012年にはアイデム(就活ナビサイト名はジョブラス)が参入、2013年には学情が朝日新聞社と業務提携、それまでの学情ナビを朝日学情ナビに改称するなど競合企業が増えました。

   その結果、エン・ジャパンは2014年2月に就活ナビからの撤退を発表(現在のサイトは2015年3月末まで継続)するなど混沌としています。

   では、2014年10月現在はどうでしょうか。大手各社とも採用担当者との値段交渉では頭を抱えているようです。

   現3年生(2016年卒)から就活後ろ倒しが実施され、採用広報活動の解禁日が3年生の12月1日から3月1日と4か月遅れることになりました。この就活後ろ倒しは、以前このコラムでも解説しましたが、就職情報会社はこの解禁日より前にインターンシップサイトを開設しています。このサイトで実質的な会社説明会を展開しよう、という訳です。

   このインターンシップサイトで、ある社、まあ母さんナビ(仮称)とでもしておきましょうか。この企業のトップはとある事情でかなり強気となりました。「お前ら、今年は値段交渉でも強気で行け。インターンシップサイトでもしっかりと交渉しろ」と号令したそうです。要するに、掲載は有料でそんなにディスカウトするなよ、ということですね。

   ちなみに「とある事情」とはここではうっかり書けません。講演のときにでもこっそり聞いてください。

   ところが、母さんナビのライバル社、父さんナビや姉さんナビ、兄さんナビなどはいずれもインターンシップサイトでの掲載を実質、無料とするキャンペーンを首都圏、関西圏を中心に展開しました。インターンシップサイトを無料とする代わりに、来(2015)年3月以降の就活ナビサイト(関係者の間では本サイトなんて言い方もします)では掲載料をくださいね、というわけです。なんだか、新聞の3か月間はタダ、みたいな話ですね。

どう考えても採用担当者側が有利な状況

   当然ながら首都圏、関西圏の企業はよほど母さんナビと付き合いのある社でもない限りは、父さんナビなど無料とする社に乗り換えます。

   頭を抱えた母さんナビは「夏までは無料」「秋以降は今年の就活後ろ倒しの混乱に対応するために、秋冬インターンシップを実施する必要がある。そのためにインターンシップサイトへの広告出稿をぜひ(お金は払ってね)」と打ち出します。

   が、これも「だってさあ、父さんナビも姉さんナビも3月までタダでしょ」と言われては返す言葉もありません。結局、首都圏でも関西圏でも3月まで無料となる社が相次いだそうです。

   せめて地方の企業からはしっかり取ろう、ということで「秋以降は有料」との方針を守ろうとしました。

   しかし、最近の採用担当者はやたらと熱心、採用担当者同士で勉強会を開いています。単なる飲み会(愚痴の言い合い大会とも)に終わる会もありますが、ナビの情報もしっかり交換する会もあります。こういう会に参加する企業の採用担当者は首都圏・関西圏のめぼしい企業が「3月まで無料」との情報を得ています。10月現在ではまだ値段交渉をしている企業も多いようですが、どう考えても採用担当者側が有利。

   かくて、就職情報会社の営業マン、特に母さんナビの営業マンは「昔は良かった」と嘆くわけです。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
  • コメント・口コミ
  • Facebook
  • twitter
コメント・口コミを投稿する
コメント・口コミを入力
ハンドルネーム
コメント・口コミ
   

※誹謗中傷や差別的発言、不愉快にさせるようなコメント・口コミは掲載しない場合があります。
コメント・口コミの掲載基準については、コメント・口コミに関する諸注意をご一読ください。

注目情報PR
追悼

お知らせ

電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中