2024年 4月 26日 (金)

「エアライン就活」準備のお値段 「40万円」は高いか、安いか

   先週に続き、テーマはエアラインスクール。

   たとえば、日本の航空会社の関連エアラインスクールの価格は、23万円(16回・24時間)から30万円(32回・60時間)くらいします。

   受講料が1時間あたり5000円ないし1万円前後というのはいい金額ですが、それだけ払って何をやってくれるのでしょうか?

何を教えてくれるのか

あっ、飛行機雲だ
あっ、飛行機雲だ
●A社・初級コース
社会人の心構え、接遇の基本、サービスの基本、自己分析、コミュニケーション、就職活動サポート(グループディスカッション)など。

●A社・上級コース
   感性磨き、表現力アップ、言葉遣い(日本語検定3級レベル)、サービスケーススタディ、グローバルマナー、就職活動サポート(面接)など。

●B社
エアラインを知る(現役客室乗務員との触れ合い、訓練体験など)、自己を知る(自己分析)、動作(所作、振る舞い)、言葉遣い・発声、自己表現、心を伝える、グループワークなど

   どちらも大体は同じ。A社のコースに「言葉遣い(日本語検定3級レベル)」とありますが、日本語検定3級は同検定サイトによれば高卒程度。

日本語検定3級のレベルとは

   では日本語検定3級ではどの程度の日本語力を求められるのでしょうか?同検定サイトに見本問題が出ています。

【敬語】
※パンフレットのデザイン案を取引先に送るメールで
「ご(高覧/閲覧/観覧)の上、お気づきの点などございましたら、ご教示ください」

【漢字】
「部長の決(サイ)を仰いだ」
「支払いを決(サイ)した」
→答え「高覧」「裁」「済」

   まあ、高校生ならよほど国語が苦手でない限りは解けるはず。なお、公式問題集は857円(税込)です。

   この内容を1.5時間かけてやるのはどうもなあ...。

さまざまな「オプション講座」も

   B社も、講座自体、自己分析・表現系が多いような気がします。いまどき、自己分析はどの大学でもやっていますし、自己分析を一生懸命やったから就活結果に結びつかないことは多くの専門家・採用担当者が指摘するところです。

   それとB社はオプション講座が多いのも特徴。TOEIC対策講座8000円、エントリーシート対策(初回)4000円、面接強化フォローアップ1万5000円・・・。

   もちろん、こうした航空会社の関連エアラインスクールに行くことで得られるメリットもあります。自社施設・設備などは他のエアラインスクールではなかなか見学までできません。

高いところは40万円以上!

   では、航空会社子会社以外のエアラインスクールはいかがでしょうか。

   色々調べてみましたが、4か月ないし半年間で10万円前後が安いところ。平均的には20~30万円。高いところだと40万円ないしそれ以上。

   内容は、航空会社関連のものとそれほど大差はありません。多くは航空会社フライトアテンダント出身の講師が教えます。

   このフライトアテンダント出身の講師が正規雇用でなく、非正規雇用であるのはまだ許せるとしても、中には古い話が中心、というスクールも多いようです。

   フライトアテンダントは40年以上前、あるいは20年くらい前でも、まだ英語力よりは容姿端麗であればなりやすかった面がありました。

   しかし、現代では、容姿端麗だけでなく、外国人観光客に対応するための英語力や英語以外の語学、ホスピタリティ、あるいは保安要員としての体力なども求められます。

   特に英語は国内大手だとTOEIC600点、外資系のうちのアジア系だと700点(550点くらいで入れるところもあり)、欧米系だと800点はないと内定が難しいと言われています。

   しかし、少なくないエアラインスクールがこの現実を無視しています。もし、語学力がない学生が来ても英語の補習講義などを勧め(もちろん有料)、落ちたら落ちたで「就職浪人すれば夢が近づく」などと諭して、さらにもう1年の受講を勧めます。昔、某予備校の「親身の指導」をもじって「親身の集金」と言われていましたが、それを連想してしまいます。

「元CAの昔話・自慢話で講義は終わり」のスクールも

   さらにひどいところになると、講師の昔話・自慢話をするだけで講義が終わり、斜め立ちのポージングを取るだけ(昔はそれでよかったそうですが・・・)、一輪挿しの花を事前に用意しないと怒り出す・・・、など恐ろしい話が取材するとボロボロ出てきました。

   このようなひどいエアラインスクールがどうして淘汰されないのか。理由はある関係者に聞いて目からうろこでした。

「外国語・国際系学部にしろ、エアラインスクールにしろ、エアライン志望の子が大量に集まる。中には、講義などしなくてもしっかりした子もいる。数が集まっていれば、ある程度の人数はエアラインに就職できて、それがまたアピールできる。どうしようもない学生は『親身の指導』と言いつつ、オプションで金を出すように仕向ければ利益はちゃんと出るし、評判も落ちない」

   うまくできているな~と感心してしまいました。

スクールの見分け方、プロはこう見る

   大学生や一般人からすれば見分けがつかないエアラインスクールの選び方はどうすればいいでしょうか。就職活動支援の「ストラッセ東京」を主宰する古澤有可さんに聞いてみました。

「うちだと、英語力が低い学生なら英会話学校に通うように勧めます。もし、大学4年生で就職できなかったら一度、他の業界に就職してから社会人転職採用を狙うようアドバイスします。無理に受講させる、ということはしませんね。選び方ですか・・・。講師の力量を学生が推し量るのは無理があります。元CAだから良いというわけでもないですし。複数の講師に会わせてくれるかどうかが重要ですね。それと受講料は高ければいいわけではありません。と言ってタダなら、というわけでも。うちはスタンダードコースが30時間で9.5万円(税別)です。講師の収入や教育投資などを考えればあまり安いのも無理がありますし」

   エアラインスクールに行くかどうかはともかく、ある程度の自己投資をしないと倍率が高いエアライン就活は厳しい、と言って、お金をかければ受かるというものでもないようです。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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