中小企業報道は、なぜ新聞社が強いのか?

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   Web上で日々のニュースが、いつでも、どこでも読めるようになり、ニュースが身近になった。新聞社など大手メディアが配信しているだけでなく、Web専業のニュースメディアも存在感を見せている。

   しかし、記者をどれだけ抱えているかというと、相変わらず活字メディア、とりわけ新聞社が圧倒的に多い。つまり、1次ニュース(最初の報道)は活字メディアに負うところが大きい。中堅・中小企業取材となるとなおさらで、活字メディアが強い。今回は、そんな例をあげる。

「日刊工業新聞らしい」記事

   2014年11月24日付の日刊工業新聞2面に「石綿入りスレートで遮水壁 原発地下水除染に有効」という記事が掲載された。原子力発電所の地下水の放射能汚染を防ぐ手段として、特殊産業廃棄物に指定されているアスベスト(石綿)入りスレートを活用した遮水壁を考案し、実用新案を取得した。スレートをコンクリート箱に入れ、積み上げて地下に埋めるだけで「20年間は高い遮水効果が得られる」という。

   実用新案を取得したのは、栄光(仙台市青葉区)という企業で、アスベスト処理液で日米豪の特許を取得済みのサンテク(横浜市神奈川区)の協力を得た。遮水壁といえば、東京電力福島第1原発で約320億円の国費を投じて凍土壁の工事が行われている。2015年3月の完成を目指しているが、壁が凍らずに難航しているうえ、30~40年の長期にわたり冷却液を循環させる維持費は膨大になる。これに比べ防水性、耐腐食性、耐久性、耐荷重性に優れるものの、廃棄処理が難しく大量に放置されているアスベスト入りスレートを活用することは、社会的な意義と経済効果の一石二鳥の遮水壁となる。原子力委員会で討議してほしい代替案であり、中小企業の新製品・新技術を追いかけている日刊工業新聞らしい記事だった。

記事に登場するのは、いずれも中小企業

   一方、障害児の学童保育所「放課後等デイサービス」を2014年4月22日付生活面で特集したのは産経新聞。児童福祉法改正で2012年4月にスタートした「放課後等デイサービス」は小中高校の就学児童・生徒が障害の種別に関係なく通える施設で、利用者がサービス開始時の5万1678人から2013年11月には35%増の6万9789人となった。株式会社など民間事業者の参入が進み、「学習塾型」「音楽教育」などの選択肢が広がっているという記事だ。登場するのは、いずれも中小企業。3Dプリンター(コンピューターで作った設計図を基に3次元の物体を作り出す装置)などを使った工作が特徴の「ケアステップ新宿」(東京都新宿区)、体を使った室内遊びを重視する「クルール」(静岡県藤枝市)、D&I(東京都港区)が東京都新宿区、大田区、川崎市で展開している「テラコヤキッズ」が紹介されている。

   このうちD&Iは障害者雇用コンサルティング事業や、障害者の就職のための訓練事業を行う会社で、「放課後等デイサービス」は学習塾からスタートした。「障害があるから就職できないわけではなく、早い段階で働くイメージを持つことで子供の可能性を最大限広げていきたい」(杉本大祐社長)と、障害者雇用に熱心なメーカーや小売業などの見学会も行っている。産経新聞の取材は、記者から依頼があったという。

   以上のように、中堅・中小企業をきめ細かく取材するとなると、やはり新聞社が強い。一方、活字メディアであっても情報の収集源としてインターネットは欠かせなくなっている。問題意識を持ってインターネット上で調べ、それをもとに取材するケースが増えている。先日お会いした弁護士は、ネット上にブログを開設しており、それを見た週刊誌記者から取材依頼があったという。新聞や経済誌は「記事に間違いはないだろう」という信頼が高い。一方、Webメディアは情報の多種多様さや1.5次、2次情報で個性を発揮している。しかし、徐々に活字メディアの信頼は薄れ、読者がWebメディアにシフトしている。現状、活字メディアとWebメディアの最も大きな違いは、記者の数なのかもしれない。(管野吉信)

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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