「自己分析」肯定派VS否定派 採用担当者への取材結果から導いた答えは・・・

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   今回のテーマは自己分析です。就活生にとって、どこまでやるべきか、あるいはやるべきではないのか。

   自己分析は「自身を振り返り、強みや弱みを把握することで志望業界・企業を決めるもの」とされています。今では就活の必須科目になっていると言っていいでしょう。

   ところが、この自己分析、就活・キャリアの関係者の間では近年、「自己分析論争」が起きています。肯定派・否定派、それぞれ言い分があるようで・・・。

自己分析・肯定派の主張

自己分析って必要ですか?
自己分析って必要ですか?

   それでは、まず肯定派の主張から見ていきましょう。

・自己分析をしっかりやることで、自分の強み、弱みが分かり志望業界・企業も決まっていく。
・自己分析をしている前提での質問・設問も多い。たとえば、自己PRなどはその典型。

   主張されているのは、就活コンサルタント・カウンセラーなど。大学キャリアセンター職員も7割くらいが肯定派でしょう。まあ、いまどき、どの大学でも就活ガイダンスでは必ず自己分析についても触れていますし。

自己分析・否定派の主張

   では、否定派の主張はどうでしょうか?

・自己分析をきちんとできる学生はいない。掘り下げていくと暗くなり、落ち込むだけ。
・自己分析を冷静にやろうとしても、そもそもの志望業界・企業などに沿った結果を自分で出すだけで意味がない。
・自己分析をしっかりやって内定を得ても、今度は就活前の仕事イメージが固定され、違った場合の退職リスクが高くなる。

   大体、この3点に絞られます。主張しているのは、採用コンサルタントの辻太一朗さん、柳本周介さんなど一部の専門家、キャリアセンター職員も2割程度は、否定論に同調しています。

   否定派の中でも、「絶対に自己分析は必要ない」とする強硬論はほぼ皆無です。「そこそこやった方がいい」とするのは共通しています。ただし、「机上の自己分析は必要ない」(柳本さん)など、自己分析の先行には否定的な方が多数ですね。

採用担当者から見た自己分析は?

   学生からすれば、自己分析は就活の必須科目と思い込んでいます。それが、否定論もある、と聞けば戸惑うことでしょう。では、採用担当者側はどう見ているのか、取材してみました。

・自己分析をどれだけやったかどうか、にはこだわらない(というよりも知ったことではない)。
・自己PRは一応は聞く。
・仕事のイメージを固定化して、そこから外れると違うからやめる、というのでは困る。その遠因が自己分析にあるなら、それはやめてほしい。
・仕事は挑戦・失敗の繰り返し、その第一歩として自己分析はやっておいた方がいい

   一番多かったのが「どうでもいい」。そりゃそうでしょう。自己分析を一生懸命やったかどうかは、企業側にとって関係ないのですから。自己分析が早期退職リスクの遠因として警戒する意見も多数ありました。

「自己分析で内定」の学生をさらに分解

   一方、「自己分析をやって就活がうまく行った。自己分析こそ就活では大事」と話す内定学生や社会人もいます。

   こうした内定学生・社会人の話は、就活学生からすれば「自己分析こそ大事」のみ注目され、そこから「自己分析のみ大事」→「就活では自己分析をしないと負けてしまう」に変化する可能性すらあります。

   では、「自己分析が重要」と話す内定学生・社会人が本当に自己分析のみをしっかりやっていたか、と言えばそんなことはありません。取材を進めていくと、以下の8項目のうち2項目以上に該当していることが分かりました。

・普段から新聞や本をかなり読んでいて、自分自身を振り返る、本(小説)の中の登場人物のことをあれこれ考えるのが好き
・普段から人付き合いが多い。人間観察をすることに慣れていて、そこから自分に足りない部分はどこか、など考えることも日常的。
・自己分析と同時並行で業界研究・企業研究なども進めている。
・就活イベントやセミナーなど、参考になるかどうかわからなくても、一人でどんどん参加する。
・多少ネガティブなことがあっても、こだわらない。
・対立する意見があってもどちらが正しいか、ということにこだわらない。
・自分の志望企業・業界とそれに受かるかどうか、というのは別問題と割り切っている。
・そもそも自己分析の結果にはあまりこだわっていない。特に途中で結果が変わっても、それでよし、と考えている。

「自己分析→業界研究」の順が失敗の元?

   いかがでしょうか。特に「就活イベントやセミナーなど、参考になるかどうかわからなくても、一人でどんどん参加する」は重要です。

   自己分析肯定派の就活コンサルタントによっては、「自己分析→業界・企業研究」という順で進めることを推奨しています。

   それから、学生によっては、

「志望動機がはっきりしないから、まずは自己分析をしっかりやってから志望業界を決めたい」
「どの業界もよさそうに見える。だったら、まず自己分析を固めてから業界研究に移る方がよさそう」

などと考えてしまいます。

   しかし、これはあまりうまい方策とは言えません。実際、このような自己分析にこだわりすぎる学生は就活で苦戦してしまいます。

   タイトルを一見しただけでは、就活生は「自分には関係ない」と思ってしまいそうな本として『大二病 「評価」から逃げる若者たち』(難波功士、双葉新書)があります。

   ところが、中身は学生生活論と就活論で、大学生・就活生にお勧めできる良書です。なお、著者は関西学院大教授で元は博報堂社員。

   同書の中で自己分析について、触れている部分があるのでご紹介します。

「極論を言えば『実際にその業界・企業・職場で働いてみない限り、適性の有無はわからない』ものです。自己分析にあまりに拘泥したり、業界・企業の情報収集のみ専心したりということでは、グズグズしているうちにタイミングを逃すだけです。要するに、走りながら考え、考えながら走るしかないのです」

   そういう作業を経験していない学生も多いでしょう。ですが、それが就活と割り切っていただくしかありません。

   内定学生や採用担当者などへの取材から私としては、自己分析については、

・自己分析は適当にやる
・業界・企業研究を進めながらやる
・自己分析の結果が変わっても最初の結果にこだわりすぎない

   この3点をお勧めします。

   ところで、自己分析をこなす理由の一つに自己PRがあります。ところが、採用担当者に取材すると「ああ、自己PRね」と苦笑されることが多数。だからこそ、先ほどの採用担当者の取材結果では「一応は聞く」とまとめたのです。

   では、その「一応」とは何か、それから自己PRにつきものの「盛る」については、次回に続きます。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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