2024年 4月 18日 (木)

中華圏の旧正月に合わせ「日本でイベントを」 外国人観光客ビジネスの盲点とは

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   私の住んでいるベトナムは、テト(ベトナム語で正月という意味。いわゆる旧正月)を迎えています。まさにこの記事が配信される(2015年)2月19日(木曜日)が元旦です。町は菊の花やキンカンの実で飾られ、祝日の気分が高まります。

   旧暦(月の満ち欠けを元にした歴)では、今年は2月19日(注1)が新年の1月1日に当たります。ですので、この日が元旦なわけです。

新暦と旧暦

新しい年が・・・
新しい年が・・・

   元旦を祝うという風習は、中国、台湾、香港、ベトナム、韓国、モンゴル、カンボジア、ラオスなどアジアの全域で見られます(注2)。日本もまさにそうで、日本人にとって最も大事な祝日は元旦でしょう。これはアジアの人にとっても同じ。

   しかし、アジアの人が殆ど旧暦を使っているのに対して、なぜか日本だけが新暦(グレゴリオ暦)の1月1日を元旦としています。

   これは海外に住むようになってわかりました。

   「(新暦)1月1日は日本では正月だから、日本では帰省して正月料理をたべるんだよ」っていうと、みんな首をかしげます。

   新暦1月1日は、多くのアジアの人にとっては何の祝日でもありません。中華圏以外でも、イスラム教徒にとっても新暦1月1日は取り立てて意味のある日ではありませんし、キリスト教圏にとってもお祝いはクリスマスです。

   どうやら新暦の1月1日を盛大に祝う国は、世界のなかで日本だけのようです。

   日本でもかつて江戸時代までは正月は旧暦の正月のことでした。それが明治政府になり、グレゴリオ暦を採用すると、正月もそちらに移動させてしまったのです。もちろん他の国も日常生活にはグレゴリオ暦を採用していますが、祝日は旧暦で祝います。元旦を祝う文化をグレゴリオ暦に移動させてしまったのは日本だけなわけです。

「札幌雪まつりは旧正月にも開催すべきだ」というシンガポールの友人

   その是非はもはやどうでもいいとして、問題なのは、日本人の多くが、正月といえば新暦の正月で、世界中のひとがそれを祝うと思っていることです。実際は反対で、新暦の正月を祝うのは日本だけしかないのに。

「(日本人)正月はお休みしないの?」
「(ベトナム人)え、正月は2月だよ」
「??」

といった会話で噛み合いません。

   さらに、旧正月の日取りを知らないものですから、平気でこの時期に仕事や会議を依頼してくる日本人がいます。

「2月19日にお伺いしたいのですが?」
「2月にお伺いしたいのですが、会社訪問や交流会を開いていただけないですか」

   そんなの、ありえません。

   こちらからみると、日本人があまりに現地の習慣に無知に見えて印象を悪くしています。

   最近は、中国や台湾のお客さんを日本に出迎えて稼ぐインバウンドビジネスの話題がおおく議論されています。彼らの休みは旧正月です。ここに1年で1番長く休むのです。

   ですから、中国や台湾のお客さんが、この時期に、日本に旅行すると、なんだか味気なく感じます。どこもお祭はやっておらず、日本は、たんなる平日です。

   もし、本気で彼らを出迎えたければ、旧正月にあわせてイベントを開催したりすべきです。シンガポールの友人が「札幌雪まつりは旧正月にも開催すべきだ」と言っていましたが、まさにそういう考えがインバウンドビジネスでは必要になってくるのではないでしょうか。(大石哲之)


【注1】旧暦では、毎年元旦の日が新暦換算だと変わる。今(2015)年は2月19日だが来年はX月Y日、という風に。
【注2】 ラオス、カンボジア、モンゴル、また独自であり中国の歴とも違うが、グレゴリオ暦ではない。

大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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