2024年 4月 20日 (土)

取引先が「駆け足で逃げていく」営業 その「自己中心的な発想」とは

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   時間がかかり過ぎて、関心度合いが希薄になっているような気がしてならない、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の日米交渉。ついに、締結が近づいているのでしょうか?甘利TPP担当大臣は、アメリカ向けの自動車部品の関税の即時撤廃で「相当な部分で歩み寄ることができた」と明らかにしました。アメリカ側の交渉責任者も、「日米間の溝は残っているが、双方が、政治の意思で合意を達成できると自信を持っている」と、楽観的な見方を示しました。

   政治の世界ではお互いの譲れない前提条件をもちつつ、落としどころを探るべくタフな交渉が必要なもの。日米政府が交渉=すり合わせを丁寧に重ねてきた努力の賜物といえるのではないでしょうか?

「来年以降の仕事はありません」と三行半

ズレを修正する
ズレを修正する

   そんなすり合わせに関して、仕事で苦手な人がいます。まさに結果として取引先から「契約はしません」とか「別の会社にお願いします」と逃げられる営業。逃げられるということは、それまで追いかけてきたわけで、時間と手間を考えるとガッカリ感は否めません。ましてや、逃げられることが何回も続くと、

「おそらく、次も上手くいかないに違いない」

   これまで実績がある営業でさえ、自信なんて吹っ飛んでしまいます。当方も、営業時代に取引先に逃げられて頭を抱えた経験があります。新たに担当した取引先から「来年以降の仕事はありません」と三行半を突きつけられたのです。

「どうしてですか?何か失礼でもあったのでしょうか?」

   理由を聞いても、「別の会社にお願いすることにしました」と回答があっただけ。この状態から、幾ら追いかけても取引が復活することはありませんでした。大いなる反省の機会となりました。さて、みなさんは取引先に逃げられたことはありますか?取材で各界の営業職の方々に訊ねてみたところ、

『取引先に逃げられたことのない営業なんていない』

と回答が返ってきました。考えてみれば当たり前。関わったすべての取引先が逃げない、完全無比な営業なんていません。ただ、逃げられる確率の高さには違いがあります。では、大いに(高い確率で)逃げられてしまう営業には、どのような特徴があるのか?それがすり合わせの頻度ではないでしょうか?

「そこまで要求していないよ」という詳細説明

   取引先に高い確率で逃げられてしまう営業。その原因は何処にあるのか?身だしなみや言葉遣いのようなビジネスマナーの欠如など幾つもあげることは出来ますが、当方は取引先が営業に対して感じる『ズレ』が大きな原因と考えます。

   例えば、取引先から「簡単な提案書が欲しい」と要求されたとき、回答まで1週間以上かかった営業。あるいは「そこまで要求していないよ」と思える、細かすぎる詳細説明にこだわる営業。自分の思い込みの対応で逃げられる可能性は、相当高いものがあるのではないでしょうか?おそらく取引先は検討をすすめるために、『早く、大枠の内容』を知りたかったはず。それがわからず、不要な時間と手間をかけられても困るだけ。おそらく、取引先は

「ありがとう。助かりました」

と感謝の言葉を述べるはず。ただ、仕事を任せることはないでしょう。

   続いて、競合他社の存在を忘れて自己中心で関わろうとする営業。例えば、取引先が依頼した見積もりを受け取ったときに

「幾つかの会社にも見積もりを依頼しているので、全部揃ってから検討します」

と返答した取引先に対して

「他社にも見積もりをお願いしていたことは聞いていません。それなら、金額を再度出し直してください」

と言い出しました。これには取引先も唖然。そもそも、何かを購買するときには複数の会社から見積もりを取るのは当たり前の時代。そんなことも認識できずに「自分だけに頼んだに違いない」と考える自己中心的な発想。おそらく、取引先は駆け足で逃げていくことでしょう。

ズレを修正する機会を持ち合せることが出来るか

   さて、こうした取引先ズレを感じる営業に関して、悩ましいのは『ズレの自覚』がないケースが大半であること。自分は取引先の気持ちがわかっている・・・と過信して、ズレが修正されずに逃げられる確率を大幅に上げてしまう。ちなみに取引先が逃げる確率が低い営業は

「当方が理解している点に間違いがあるとまずいので、確認をさせてください」

とお互いの認識を『擦り合せる』機会を小まめにつくります。ズレがあることが悪いのではなく、ズレを修正する機会を持ち合せることが出来るかどうか、が逃げられる確率を変えるのではないでしょうか?(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
株式会社セレブレイン
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