2024年 4月 27日 (土)

「3年で正社員」の目前で「雇い止め」 おとなしく引き下がるしかないですか?

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弁護士解説 「雇い止め」を無効にした判例がある

   契約社員の方は、雇用に対する不安を常にかかえていますよね。ご相談者の場合、3年間働けば正社員になれると思って今まで頑張ってきたにもかかわらず、2年半で契約が打ち切られてしまいそう、とのことで納得いかないのは当然だと思います。

   残念ながら、2013年4月1日以前に開始している契約社員の方は、「自分を正社員にして欲しい」と会社に要求できる法律上の権利はまだありません。ご相談者の場合、契約開始は2012年末ごろのようですね。

   しかし、正社員化の問題は別にして、契約の更新自体は、ご相談者が希望したにもかかわらず、会社が更新を拒絶してきた場合は、会社と争って勝てる可能性があります。いわゆる「雇い止(ど)め」と言われる問題ですね。

   雇止めに関しては、下記の内容を考慮し無効にしてきた判例があります。

(1)雇用が一時的・季節的なものではないか
(2)契約は何回更新したか
(3)通算どのくらい勤務してきたか
(4)更新手続きがずさんで、いい加減ではなかったか
(5)雇用継続の期待を持たせるような言動や制度があったか
(6)継続雇用に対する労働者の期待はどの程度だったか

   また、それらの判例をうけて近年、労働契約法19条でほぼ同内容の条文が制定されました。

   今回のケースでは、仕事の内容が臨時的ではなく、更新の回数も4回と多く、雇用の通算期間も2年半と、短期とは言えないという事情があります。それだけでなく、最初から「3年後には正社員に!」などという言葉で契約社員を募集していたという経緯もありますので、ご相談者が特に会社で問題を起こしていなければ、雇止めは無効と判断される可能性はあります。いくら誠意ある謝罪をされたとしても、以前より3年になる手前で雇止めを繰り返してきたという会社なのであれば、ご相談者には、ご自身の立場を守る為に争う権利があります。契約社員だから・・・と諦める必要はありませんよ。

   また、前回お話しさせていただきましたが、2013年4月1日以降に開始した有期の労働契約が通算5年以上であれば労働者からの申し込みにより、無期の労働契約に転換できるようになりました。このルールは、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることを目的としたものです。

   弁護士として、この法律によって少しでも正規雇用の方が増えることを願っています。


   ポイントを2点にまとめると、

(1)雇用状況や更新回数、通算期間、更新手続きのずさんさにより、雇止めを無効にした判例がある。
(2)雇用継続に対する期待の持たせ方や度合いも考慮される。

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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