2024年 4月 27日 (土)

経営者が「裸の王様」になるとき こんな姿勢が「イエスマンの山」を築く

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   様々な会社から参加者が集まる管理者研修では、お互いの課題共有とその解決を目的としてグループ討議を実施しています。

   先日実施した研修議論の場で、管理者が管理者としての力を発揮しにくい環境の原因として「ワンマンな経営者の存在」が指摘されていたので、興味深く聞いてみました。具体的には、「自分の意見を言い放って、人の話を聞かない」「すぐに感情的な物言いでの命令になって、部下の立場を無視する」「部下との日常的な会話がなく、何を考えているのか分からない」等々がその中身でした。

「コミュニケーションの3原則」とは

あ、王様だ・・・
あ、王様だ・・・

   言ってみるなら、社長のワンマン・コミュニケーションです。自分が思い立った時にだけ、思い立った事を言うだけのコミュニケーション。確かにこれでは、管理者としては悩ましいことこの上ないことでしょう。このグループでは、管理者サイドからの解決策もそれなりに話し合ってはいましたが、やはり問題解決には社長自身の自覚が不可欠でしょう。

   たまたまこの研修の翌日にお目にかかったワンマン社長のY氏。ちょうどいい機会だったので、このお話をしてみました。すると即座に「僕もそうだって言いたいのかい」と不満げに返してきました。この方どう見ても、人の話を聞かない、感情的な物言い、日常的会話の欠如の上記ワンマン・コミュニケーション3点セットがきれいに揃った状態なのですが、御自身には全く自覚がないようでした。これでは取り付くシマがありません。社長のワンマン・コミュニケーションは、誰にも咎められることがないのでY社長のように自覚がないというのも、やっかいな点であるなとつくづく思わせられるところです。

   私が担当する営業関連や組織活性化関連のほとんどの研修でお話する項目として、「コミュニケーションの3原則」というものがあります。言い換えると、ひとりよがりのコミュニケーションにならないコツ、といったところでしょうか。

(1)コミュニケーションは量が質をつくる
(2)コミュニケーションはSkillよりWill(技より気持ち)
(3)コミュニケーションは話すより聞く

がそれです。

ワンマン・コミュニケーションの悪影響

   営業活動に照らして申し上げるなら、まず相手との接点を増やすことが第一、本当に相手のお役に立とう思って接することが大切、自分勝手に売り込むのではなく相手のニーズを聞き出すことが成約への近道、そんな内容です。

   実はこの3原則、2人以上の人が集まるコミュニティにおいては、円滑な関係づくりに関してあらゆるケースに通用すると言っていい万能真理なのです。例えば、家庭でのケースを考えてみましょう。奥様や子供たちから無視され疎まれるお父さん、どこにでもありそうなお話です。そもそもの原因はどうあれ、日常的なコミュニケーション量の不足、仲良くしようという気持ちの欠如、口を開けば一方的な文句ばかりで相手の話を聞こうともしない・・・。たいていは、3原則逆張りの蓄積の結果、今に至っているのです。

   解決策は、3原則徹底以外にありません。私の周囲で、本人が突然病に倒れてそれをキッカケとして家庭内が円滑になったという話もありますが、これにしてもコミュニケーションの量と質が上がり、思わぬ形で3原則が改善された例と言っていいでしょう。

   では会社組織において、トップの3原則に相反するワンマン・コミュニケーションはどんな影響を及ぼすのか。第1にコミュニケーション量の不足は、意思の疎通や意識の共有がはかれなくなります。第2に気持ちの伴わない一方的な命令姿勢は、部下のやる気をそぎ、イエスマンの山を作ることになるでしょう。第3に話すばかりで聞くことをしないコミュニケーションは、結果として唯我独尊を極め裸の王様を作り上げることになるのです。

経営者のお悩みの原因は、すべてここに集約される?

   こう言った流れは最終的に、組織内の活力欠如、管理者が育たない環境、意見の出ない消極的な組織風土等々につながります。すなわち、頻繁に耳にする経営者のお悩みの原因はすべてここに集約されるのではないかとさえ思えるほど、オーナー企業における様々な問題の根源はワンマン・コミュニケーションに端を発しているとも言えるのです。社長方の組織活性化や人材育成、特に管理者、後継人材育成に関するお悩みに関しては、まずその原因としてワンマン・コミュニケーションの弊害を疑ってみろ、は鉄則とも言えるのです。

   実は先のY社長も日頃から、「管理者が育たない」「自分の意見を言わないイエスマンばかり」と嘆いていました。すなわちその根本的な原因が、社長のワンマン・コミュニケーション3点セットにあるのは確実なのです。しかしながら、この点を本人に納得のいくように説明して、かつ今までの習慣を改めてもらうのは至難の業でもあります。ポイントは、いかに分かりやすいキッカケをつくって、スムーズな理解に導いていくか。

   ちなみにY社長は、自慢の娘さんとの仲良しぶりが評判です。そこにはきっと、家庭内コミュニケーションにおいて3原則が活きているはずと踏んでいます。その話をキッカケにして、じっくり時間をかけてワンマン・コミュニケーションの改善を働きかけていけば、Y社長の人材に関するお悩みは徐々に解消していくだろうと確信しています。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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