2024年 4月 25日 (木)

毎月100時間残業がもう2年も これって違法ではないのですか?

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   先日、ABCマートが違法な残業をさせたということで、運営会社などが書類送検されたというニュースが大変話題となりました。残業代は払われていたからといっても、さすがに労使協定を上回る100時間超えの残業となるといかがなものかと思ってしまいますよね。

   そこで今回は、2年間毎月100時間も残業させられたという飲食店社員の方のエピソードを基に、「違法な残業時間」について解説していきたいと思います。(文責:「フクロウを飼う弁護士」岩沙好幸)

上司は「問題はない」と説明

また残業だよ
また残業だよ

   私は、飲食店で副店長として働いています。アルバイトではなく、社員です。

   お店の営業時間は、11時~14時がランチタイムで、16時~23時までがディナータイムとなっています。もちろんシフト制を組んで回しているのですが、店長がすべてのシフト調整を行っており、さらにアルバイトの希望を優先するので、私の残業・休日労働時間が、ここ2年間で計算してみても、毎月100時間を超えています。

   先日、あまりにも休みがない状況に耐え兼ね、本社の上司に相談をしたところ、「残業代はしっかりと払っているのだから、我慢してもらわないと。それに36協定も結んでいるんだから、問題はない」と言われました。

   しかし、36協定について他店の友人に聞いてみると、延長できる限度があるはずだから、2年間毎月100時間超えは違法だと思うよ、と言われました。

   残業代は払ってもらっているのですが、残業代を払えば問題はないのでしょうか?また、36協定を結んでいれば、何時間でも残業させていいのでしょうか?(実際の例を一部変更しています)

弁護士解説 36協定の「時間の上限」とは

   毎月100時間を超える労働は、肉体的にも精神的にも大変です。長時間労働は, メンタルヘルスの不調や、 さまざまな疾患の原因ともなることがあり、 労働安全衛生法66条の8などにより、 時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められるときは、医師による面接指導を義務づけています。

   そもそも、労働基準法では、1日の労働時間は8時間まで、1週間では40時間までと定められています。それ以上働かせた場合は残業になります。残業をさせる場合は、いわゆる36協定を結んだうえ、労働基準監督署に届出をしなければなりません。このことは労働基準法の36条によって定められています。

   36協定とは、労働者を法定労働時間(1日8時間1週40時間)を超えて(延長して)労働させる場合や、休日に(1週1回または4週を通じて4回を下回って)労働させる場合には、あらかじめ労働組合(労働組合がない場合には労働者の代表)と使用者で書面による協定を締結しておかなければならないというものです。

   ただ、36協定を結べば何時間でも残業させていいわけではなく、1か月だと45時間までの残業時間しか認められていません。また、例外的に、1年のうち6か月を限度として、1か月60時間まで延長することができますが、これは臨時的に通常の業務量ではこなせないような事態が生じた場合にしか認められません。

違法ではないけれど・・・

   ですので、今回のケースで考えますと、1年間のうち6か月という限度を超えて2年間毎月延長していたことはこれらの制限を超えておりますし、残業時間が100時間超えということであれば、60時間までという限度も超えており、同じく制限を超えております。

   ただし、この制限はあくまで厚生労働大臣が示している基準であって、法律によって定められた制限ではありません。したがって、制限を超えた場合、行政指導が行われることはあっても違法となるわけではありません。法律上は、36協定で定める残業時間の上限はないというのが現状となります。ただし、協定で定めた時間を超えれば、違法性を問われることになります。

   今回の飲食店は、毎月100時間の残業があり、それを認める36協定もあるとのことですが、これは違法でないものの、厚生労働大臣の示す基準からは大幅に超過しております。長時間労働により従業員の健康を害する危険が高いので、他にも従業員を雇うなどして、今いる従業員に残業させすぎないよう会社は努力をすべきですね。


ポイント2点

●36協定とは、労働者を法定労働時間(1日8時間1週40時間)を超えて(延長して)労働させる場合や、休日に(1週1回または4週を通じて4回を下回って)労働させる場合には、あらかじめ労働組合(労働組合がない場合には労働者の代表)と使用者で書面による協定を締結しておかなければならない。
●36協定の基準(法律による制限ではない)では、1か月45時間までの残業時間しか認められていません。しかし例外的に、1年のうち6か月を限度として、1か月60時間まで延長することができます。

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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