子育て支援で負担増となるのは誰か

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   日経報道によると、政府は子育て支援のための追加費用を企業負担で賄う方針とのこと。具体的には、厚生年金の保険料と共に徴収されている子ども・子育て拠出金(旧児童手当拠出金)を引き上げることで対応するというものだ。


   具体的には、企業負担分の引き上げだ(保険料0.15%→0.20%前後)。筆者は、これは結構凄い話だと思っているが、ほとんど話題になっていないようなので、簡単にポイントだけまとめておこう。


負担の仕組み

実際に負担するのは・・・
実際に負担するのは・・・

1:企業負担ではなく、サラリーマンの負担である


   「企業負担分の引き上げ」と聞いて自分には関係ないやと思っている人もいるかもしれないが、企業側から見れば給料や社会保険料すべて込みで『人件費』であり、突き詰めればすべて従業員自身の負担である。政府に納める分が増えれば、従業員個人に支払う分が減るだけの話だ。だから今回の話も「サラリーマンの負担で国全体の少子化対策をやろう」ということになる。


   下記の図(1)は以前に筆者が作成したものだが、過去10年分ほどのサラリーマンの給料と企業負担分をグラフにしてみると、企業の負担分が上昇し続ける一方、給料が緩やかに下がり続けているのが明らかだろう。


 図(1)傾向の違いは明らか(*注)
図(1)傾向の違いは明らか(*注)

2:そもそも、児童手当の費用はサラリーマンしか負担していない


   そして、これも意外に知られていない話だが、そもそも子ども・子育て拠出金の負担は、サラリーマンだけが行い、自営業者らは負担していない(*正確には国、地方自治体負担分も加わる)。要するにこの拠出金とはサラリーマン限定の『社会保障税』みたいなものであり、全体で見れば、開業医や弁護士や農家の分まで、サラリーマンが一部肩代わりしているようなものだろう。


   「お給料の0.15%くらい大した額ではないだろう」と思う人もいるかもしれないが、そういう、なあなあの積み重ねが上記グラフというわけだ。


3:たぶん、これからもサラリーマンの負担はどんどん増える


   まとめると、国民全体が対象の、(主に)児童手当向けの拠出金はなぜかサラリーマンだけが負担しているが、少子化対策でいろいろお金が必要&消費増税はなかなか出来そうにないので、さらにサラリーマンに負担させようというのが、今の政府の方針ということだ。


「サラリーマンは大変だよねえ、いっぱい取られるから」

   以前も書いたが「消費税引き上げ」に反対なのであれば、道は「(毎年1兆円超ずつ増え続ける)社会保障制度の抜本的な見直し」以外にない。ズバリ言えば、費用・サービスの大幅な削減だ。だが、どの政党もそれを主張していない以上、消費税増税を妨げても、政府は他の取りやすい人たちから取り上げるだけの話だ。それが誰なのかを、上記の動きは端的に示している。


   最後に、面白い話を一つ紹介しておこう。


   筆者がサラリーマン時代、近所の酒屋のオヤジは、筆者が買い物をするたびにこんなことを言っていた。


「サラリーマンはいいよねえ、いっぱい年金とかあるから」

   ところが筆者が独立したと知った瞬間、オヤジはこんなことをさらりと言ってのけた。


「サラリーマンは大変だよねえ、いっぱい取られるから」

   自分で確定申告する人間はとてもずる賢い。いい加減サラリーマンも、財布に手を突っ込まれそうになったら声を上げる程度には、ずる賢くなってはどうだろうか。(城繁幸)


   【*注】グラフについて、給与は賃金構造基本統計調査の現金給与と年間賞与その他より作成。社会保険料については年度の途中で率が変わった場合は新しい率を適用。健康保険については協会けんぽ(東京都)の保険料を使用。なお実際は4~6月の標準報酬月額が保険料の基準に用いられるので、あくまでも目安である。

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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