日本の保育園は「サービス」しすぎ? 潜在保育士が復帰しない理由

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   保育士の資格をもっていながら、保育士として働いていない「潜在保育士」。全国に68万人ともいわれ、保育園不足解消の壁になっています。この問題については、当コラムでも何度か、当事者へのインタビューを報じてきました。

   「子どもの命を預かる仕事への責任感が重すぎる」「賃金が低い」「女同士の人間関係が辛い」など、様々な理由から、保育士をやめた女性(男性)たち。最近では、ネットでも、議論が盛り上がっているようです。

「心が枯れていくんです」

せんせいも、たいへんですね
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   読売新聞が運営する投稿サイト「発言小町」では、 「潜在保育士の方、何故復帰しない?」という投稿がありました(2015年10月6日)。投稿者は、現役の保育士とみられる女性。「給料が安いこと以外で、復職しない理由を是非お聞かせ下さい」と問いかけました。彼女が疑問を感じているのは、行事で使う飾りなど、「最終的には捨てられてしまう制作物を、廃材を使って何時間もかけて作る作業」や、「保護者が感じる手厚いサービスの保育園・熱心な運動会」など。「保育をやっていると、心が枯れていくんです。もちろん、やり甲斐もありますが、(略)誰にでもできるくだらない仕事と感じたりもします」との書き込みからは、かなり疲弊している様子が伝わります。

   彼女の投稿には、現役の保育士や、潜在保育士たちから、賛否両論が寄せられました。筆者が確認した段階で、おおよそ「共感」が7割、それ以外の意見が3割といった感じです。

   「私の周りにも潜在保育士が数人います」という人は、それぞれ理由は異なるとしつつも、「保護者にうんざりという人」が目立つと指摘。中には「トイレトレーニングなど、本来は自宅でやるべきしつけ」を、保育士任せにする保護者も、いるとのこと・・・。また、「命を預かる仕事であるにもかかわらず、保育イコール育児のようなとらえ方で評価が低い」のも問題と主張しています。これはまったく、その通りでしょう。そもそも「育児」への社会的な評価が低いからこそ、保育士の賃金も、低く抑えられてしまうのではないでしょうか。

日本の保育園は「サービス」しすぎ?

   反論も、一部ありました。

   「子ども達の喜ぶ顔、親御さんたちの嬉しそうな顔を思えば疲れも吹っ飛びます」という人は、「制作物を作っているときも、『これは○○くん喜ぶね』とか、そういう笑顔と会話ばかりですよ。(※注:投稿者が「誰にでもできるくだらない仕事・・・」と書き込んだことについて)他の保育士を貶めるようなことを言わないでください」と、主張しています。

   一方、こうした「制作物」や「行事」への負担は、日本ならでは、との意見も。「海外で保育士をしていた」という女性いわく、「海外の保育士は、給料は安いですが、その分無駄な仕事がありません。定時に帰れますし、行事もない。外遊び、ご飯、洗濯、普通のお母さんのようです」。どこの国かは明らかにされていませんが、「保護者参加の行事は実費で自由参加。暇な保護者にボランティアで手伝ってもらいます」とのこと。

   確かに、日本の保育園は、お遊戯会に運動会、園の草むしりなどのボランティアなど、とにかく「保護者向けのサービス」や活動が多いと感じます。筆者の知人の保育士も、そのために多くの時間を割いています。

   もしかしたら、日本の保育園は、「保護者へのサービス」に力を入れすぎなのかもしれません。「見せる」ための記念行事はほどほどにして、保育という『本来の役割』に立ち返ることも、考えた方がよいのではないでしょうか。「子供は好きだけど、行事の準備が大変で・・・」という現場の声からは、『保育園の(過剰な)サービス業化』が、保育士たちを追い詰めている可能性も感じます。皆さんは、どう思われるでしょうか。(北条かや)

北条かや(ほうじょう・かや)

1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。著書に『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』。ウェブ媒体等にコラム、ニュース記事を多数、執筆。TOKYO MX「モーニングCROSS」、NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」(2015年1月放送)などへ出演。
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