2024年 4月 25日 (木)

「業務委託」契約で「時間外」続き 「残業代出ない」は本当ですか?

弁護士解説 形式的には、労働法の適用はない

   (企業と個人の契約の場合)業務委託とは、労働者として、企業に勤める働き方ではなく、企業と契約を結んで、仕事をするという働き方です。つまり、個人が、個人事業主として、企業と対等の立場で契約をして、企業から頼まれた仕事をするという働き方を言います。

   実質的に業務委託で契約を結ぶと、企業とは独立した個人として、仕事をすることになります。このため、形式的には、労働法の適用はないことになります。したがって、ご相談されている残業代の請求はもちろん、一方的に企業との契約(業務委託契約)を解消することもできなくなると考えられます。

   また、そのほかの問題点もあります。業務委託は、企業から独立した存在となるので、普通、会社員として会社に雇用されると労働保険・社会保険に加入することになりますが、業務委託の場合は対象外です。したがって、業務災害の場合も個人の自己負担となります。その他、労働者であれば当然認められる権利(たとえば自由に退職して仕事を辞める、労働者であれば解雇が簡単にはされない)が認められません。

   では、業務委託という形式で契約を結ぶと、常に労働基準法の適用がないのでしょうか。

   労働基準法9条は、「『労働者』とは、職業の種類を問わず、事業または事業所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と定義されています。

   そして、「労働者」に該当するかどうかは、雇用契約、請負契約といった契約の形式にかかわらず、実質的な働き方をみて判断するとされています。具体的には、仕事の依頼に対する諾否の自由の有無(指示された仕事を断れるかどうか)、指揮監督の有無(自分で働き方や仕事の仕方・進め方を決めているかどうか)、勤務場所・勤務時間を拘束性の有無(どの程度時間や場所の制限があるか)などが判断要素としてあげられています。

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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