就活「解禁」まだまだ迷走の予感 「6月はダメ」なこれだけの理由

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   競馬で言うところの長期休養明けとなる石渡です。(2015年)11月刊行の『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)が草稿を土壇場までずらしまして、バタバタしておりました・・・。

   さて、今回のテーマは「17卒の就活時期」。ここ最近、急な動きがあってバタバタと決まり、まだまだ尾を引いています。

16卒就活が変わった理由

結局どうなるの?
結局どうなるの?

   まず、16卒就活の時期変更からおさらいします。15卒就活まで、3年12月広報解禁・4年4月選考解禁でした(以降、12月・4月と略)。広報解禁とは、説明会開始・ナビサイトの本オープンなどを意味します。選考解禁は文字通り、選考を開始することです。

   この、「12月・4月」が完ぺきだったか、と言えばそうではありません。もともと、2013年卒までは「10月・4月」、つまり、広報解禁が3年生10月でした。これでは、学業を阻害する、ということで12月に変更になったのが、2013年卒から。

   ところが、2012年に政権が交代、第2次安倍内閣が成立すると、翌年、2013年にさらなる時期変更が一気に決まります。

   政府要請を受ける形で、経団連は「3月・8月」、つまり、広報解禁3年3月、選考解禁が4年8月としました。

   これも、理由は大学生の勉強と留学。つまり、時期変更によって、大学生が勉強しやすく、そして留学しやすくするようにしたのです。

   さらに、以前から言われていた「就活の長期化」。これで学生が疲れ切ってしまうため、それを防ぐためにも短期間で選べるようにすることも、目的の1つでありました。

16卒時期変更で勝ち組も長期化

   では、16卒就活がその後どうなったでしょうか。

   実は決まった当初から、企業の採用担当者や大学関係者(それも学長など幹部クラスではなく、キャリアセンター職員など現場担当者クラス)は、「絶対にまずい」と恐れていました。それが、図らずも当たってしまったのです。

   現実になってしまった恐れとは、主に3点あります。

   ・その1:理工系学生が勉強できない、文系学生もしない

   勉強をさせるための時期変更でしたが、「3月・8月」で大弱りだったのが、理工系学生です。卒業研究の準備が4年生7月ごろから始まり、8月から9月にかけては佳境。そんな時期に就活をするわけで、かなり無理がありました。

   では、文系学生は、と言えば、言うほど勉強するようになった、という評価はほとんどありません。

   ・その2:大量の内定辞退が出て、勝ち組も長期化

   中小企業や無名企業を中心に、大量の内定辞退が出る、と言われていました。実際には、中小・無名企業だけでなく、大手企業でも想定以上に内定辞退が出てしまったのです。

   オワハラ、というキーワードが就活では定着。「オワハラでないオワハラ」として、「勝手推薦」なども出てきたことは当連載でも以前に書いた通りです。

   しかも、大手企業の内定が出る時期が遅いこともあって、勝ち組・負け組ともに就活は長期化してしまいました。

   負け組だけでなく、勝ち組の学生も疲れ切ったのは、16卒就活の大きな特徴です。

   ・その3:勘違い学生続出で、2極化さらに進む

   2015卒までの「12月・4月」のとき、広報解禁と就活解禁は額面通り、受け止めることができました。

   広報解禁は説明会開始、選考解禁は選考開始。そして、仮に広報解禁と同時に、就活を本格的に始めたとしても、十分に間に合いました。ま、4年4月に選考が始まる大手企業は厳しかったとしても、5月から6月またはそれ以降に選考を実施する中小・無名企業には間に合っていました。

「時期」の調査結果をみると

   ところが、16卒就活は大きく変わってしまいました。広報解禁は、説明会開始を意味する企業もありましたが、選考開始を意味する企業も多数ありました。そして、選考解禁は、多くの企業が実質的には「内定出し」を意味していたのです。

   これを裏付けるデータが、株式会社ディスコの「2016年度・新卒採用に関する企業調査(2015年7月中間調査)」です。

   面接、内定出しの開始時期はそれぞれ以下の通り。

   ・面接

   3月以前...15.6%、4月...26.7%、5月...20.7%、6月...13.2%、7月...6.6%、8月...14.6%

   ・内定出し(内々定含む)

   3月以前...4.6%、4月...14.1%、5月...19.7%、6月...22.8%、7月...13.2%、8月...17.2%、9月以降...8.5%

   7月以前に内定出しを始めた企業は7割もあります。

   それから、リクルートキャリアの就職みらい研究所「2015年8月1日時点就職内定状況(2016年卒)【確報版】」では、8月1日選考開始の時点での内定率は65.3%でした。

   15卒の選考開始日だった4月1日時点の内定率は18.5%。もちろん、この調査は内定率であって、ディスコの調査と単純に比較することはできませんが、それでも「8月イコール内定出し」を裏付けるには十分なデータです。

悪評から「3月・6月」でも悪評だらけ

   かくて、悪評が噴出。学生、大学、企業の三者とも否定論が続出し、(15年)10月25日には読売新聞が「6月選考解禁見直し」を報道。その後、その通りになります。

   この時期変更で、現3年生が対象の17卒就活は「3月・6月」となります。

   悪評から変更となった、「3月・6月」ですが、実はこれはこれで悪評がすでに出ています。

6

   月は株主総会の時期です。中小企業や大手企業でもメーカーなど、採用担当者を多く配置できない企業では、採用担当者も株主総会の対応をしなければなりません。

   それでいて、4月は、新入社員の研修時期。経理や総務などを兼務する企業だと、年度替わり時期でやはり忙しい時期です。

   となると、動けるのは5月か、7月以降。あるいは、3月以前。

   そこで、今の時点で、相当言われているのが、「12月から2月にかけてのインターンシップは実質的な説明会。3月は選考開始。6月に内定出し」というスケジュールです。

   そして、18卒か19卒で「12月・4月」復帰が、すでに有力視されています。就活時期は結局、どの時期にしてもデメリットがあるわけで、より少ない時期を考えると、私も「12月・4月」が現実的かな、と考えます。

甘く見ている学生が多い

   さらに、16卒就活(企業からすれば採用)で多くの企業は1つのことを学びました。それは、早めに動いている学生は、就活への意識が高いことです。あ、「意識が高い」って、学生を否定するキーワードになりつつあるので、「モチベーションが高い」くらいにしておきましょうか。

   企業からすれば、意識、もとい、モチベーションが高い学生は欲しい人材です。

   ところが、学生の動きは16卒以上に緩やかです。先日、都内の某準難関大を訪問したのですが、就活ガイダンスの参加者数は2014年に約1800人だったものが、今年は800人と激減。

   これは、他大学でも、同様です。講義前後に5分、説明時間を設けて就活ガイダンス参加を強く促した関西外国語大は横ばいですが、こうした大学は例外的な存在。

   それだけ、先輩学生が就活でうまく行っているから、甘く見ている学生が多いのです。

   企業は、先を読んで、モチベーションが高い学生の多い3年3月以前にインターンシップ(という名の説明会)を開催。そこから、予定数以上に内定を出して、辞退率が高くてもいい、と割り切っています。仮に辞退率が低くても、吸収できる余力ある企業の方が多いですし。

   そこに乗り遅れた学生はどうなるか、ちょっと怖いところ。3年生の皆さんは早めに動くようにしましょう。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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