2024年 4月 24日 (水)

「先輩のヒミツ」を会社が調査 「知っていて答えない」と処分されますか?

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   師走とは良く言ったもので、お正月休みに向けて、急ピッチで駆けまわるように仕事を片付けている人もいるのではないでしょうか。「お正月は変わらずに仕事です」という人もなかにはいるとは思いますが、お正月休みが取れる人は、仕事を片付けて、気持ちよく新年を迎えたいものです。

   そんな忙しいさなかに、1人だけサボっていれば怒られるのも当然です。今回は、1人が仕事をサボった事によって、後輩たちに追及の矢が飛んでしまった件について解説をしていきたいと思います。(文責:「フクロウを飼う弁護士」岩沙好幸)

連帯責任で減給に?

居眠りの原因は・・・
居眠りの原因は・・・

   いつもお世話になっている先輩が、仕事中にウトウトしていて、部長からこっぴどく怒られていました。先輩は、「残業続きで疲れていて」と言い訳をしたようですが、実は最近ゲームにハマっているらしく、帰宅後は毎晩深夜まで熱中してやっているそうです。

   後日、部長から先輩のいないところで、私たちに「あいつがいつもウトウトしている本当の理由は何だ?もし知っているのに答えないのであれば、お前たちも連帯責任で減給だ!」と言ってきました。

   もちろん、先輩が嘘の言い訳をしたことは良くないことだと思うのですが、お世話になっている先輩ですし、減給されてしまうのは可哀そうだと思うので上司には内緒にしようと思っています。

   ただ不安なのですが、もしも、先輩の理由を知っていたことがバレてしまった場合、内緒にしていた私も連帯責任で減給されてしまうことは仕方がないことなのでしょうか?(実際の事例を一部変更しています)

弁護士解説 調査に協力する義務が生じる場合もあるが...

   普段お世話になっている仲の良い先輩であれば、多少のことには目をつぶってかばってあげたくなりますよね。さて、まずは会社の上司から聞かれたことに関して、どんなことでも正直に答えなければいけないのか、という点について説明していきましょう。

   会社の従業員は、会社に対し、労働力の提供義務を負うとともに、これに付随して企業秩序遵守義務というものを負います。そのため、会社から他の従業員の秩序違反に関して事情聴取を求められた場合に、調査に協力する義務が従業員に生じる場合があります。

   ただ、もちろん全ての場合において正直に申告しなければならないわけではありません。

   具体的には、調査対象である違反行為がどのような性質、内容のものであるのか、労働者がこれを知るためにどんな機会があったのか、などを総合的に判断して調査に協力する義務があるか否かが決まります。

   今回のご相談についてですが、仕事中の居眠りが直ちに会社の就業規則に違反することは考えがたいです。そうだとすると、会社が行う調査に協力する義務も生じません。

   仮に先輩の居眠りが就業規則に違反する様なものだとしても、居眠りをしたことで会社に重大な損害を及ぼすようなものでない限り、調査に協力する義務は生じないでしょう。

   また、内緒にしていたことで連帯責任を取らされることがあるのか、という点について説明していきます。今回のご相談の連帯責任とは、会社から減給という懲戒処分が下るのかどうかということになりますね。

就業規則の規定は合理的であることが求められる

   会社は懲戒になる場合の種別及び事由を就業規則で定め、就業規則を定めることで懲戒処分をすることが可能となります。もちろん、就業規則の規定については合理的であることが求められます。労働契約法15条では、なされた懲戒が、労働者の行為の性質や様子などの事情に照らして、客観的に合理的な理由もなく社会通念上相当であると認められない場合は、権利の濫用として無効とすると定めています。

   今回のケースでは、先ほど説明した通り調査協力の義務がない以上、仮に会社がご相談者に対して懲戒処分としての減給をすると権利の濫用となるでしょう。

   以上のとおり、先輩が仕事中にウトウトすることは好ましいことではありませんが、実際はゲームにハマっていて毎晩深夜まで熱中してやっていたことを会社に報告する必要はないでしょうね。それを正直に報告しなかったとしても会社から減給処分を受ける可能性は低いでしょう。

   しかし、お世話になっている先輩とはいえ、仕事に影響が出るようなゲームの仕方をしているのは、いけませんね。個人的に先輩に話してみるなどして、まじめに仕事に取り組むよう、さりげなく促してみましょう。

ポイント2点

●会社から事情聴取を求められた場合に、調査対象である違反行為がどのような性質、内容のものであるのか、労働者が内容を知る機会があったかどうかによって、調査協力の義務が従業員に生じる場合がある。

●減給などの懲戒は、就業規則の規定で定められており、労働者の行為の性質や様子などの事情に照らして、客観的に合理的な理由もなく社会通念上相当であると認められない場合は、権利の濫用として無効になります。

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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