「具体的に」と言われピンと来ない諸君、つまりこういうことなのだよ

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   今日のテーマは「具体的な説明」です。

   学生のエントリーシートを添削したり、模擬面接などを行ったりすると、私を含め社会人側はついついこういうアドバイスをしてしまいます。

「もっと具体的に」

   ところが、学生にはピンと来ません。それでさらにドツボにはまっていくことも。反省を含め、改めて考えてみましょう。

   いったい「具体的」とは何なのでしょうか?

素の「飲食店」で済ませるな

「飲食店」だけで分かるか
「飲食店」だけで分かるか

   エントリーシートでも面接でも、自己PRを求められたり、ガクチカ(学生時代に頑張ったこと)について問われたりしたとき、最近目立つのが「飲食店」という言い方です。

   就活学生がアルバイト、それも飲食店での経験をネタに使うのは今も昔も変わりません。顕著なのは、回答で説明されるバイト先が、ただ「飲食店」そのままである傾向です。

   以前なら、スターバックスなのか、ロッテリアなのか、ガストなのか、固有名詞を出してきちんと話す学生がたくさんいました。

   それが今はざっくりと「飲食店」。

「飲食店でのアルバイトを通して、同僚ときちんとコミュニケーションをとること、それとお客様の気持ちに寄り添うことが大切と感じました」

   うーん、ありがちだし、よくわかりません。具体性を欠いていると言わざるを得ません。

   わからなければ落としていくのが、初期選考(特にエントリーシート)の鉄則です。

他との違いをひねりだせ

   と言って、固有名詞や業態を明らかにして答えれば具体的、となるわけではありません。スターバックスの竹橋パレスサイド店なのか、川崎モアーズ店なのか、店舗名まで出す必要もありません(個別の店舗に紐づけてアピールしたいなら別)。

   では、具体的とは何か?

   ともかく、友人や、カウンセラーなどの社会人に自分のアルバイトのことを5分間近く、細かいことも含めて話してみてください。話す相手がいなければ、普段利用しているコンビニでも飲食店でもいいので、業態の違う他のアルバイトの仕事と自分の仕事がどう違うか、つらつら考えてみてください。同じようなアルバイトでも絶対どこか違うはずです。

   しかし、私が「話してみて」と言うと、ほとんどの学生は、

「えー、でも普通ですよ、私のアルバイトは」

と、尻込みします。

   まあまあ、騙されたと思ってさあ、とりあえず話してみなよ、と学生を促すと、

   例1:「いや、普通の中華料理店なんですけど。5店舗はあるかな、という程度のチェーンで、知名度も低いし・・・。厨房は中国人留学生ばかりで日本語があまり通じないので、そこが大変なんですけど」

   例2:「よくある喫茶店チェーンなんです。まあ、コーヒーの種類がなぜか30種類くらいあって、はじめのうちはその説明が大変でした。今は全部、飲み比べて説明できるようにしていますけど」

   例3:「ごくごく普通の定食屋ですよ。野球場が近いので、イベントや試合があるときは店頭販売用のお弁当をたくさん用意します。その準備とか呼び込みとか、それはちょっと大変でした」

   「普通の」「よくある」と言ってはいますが、よくよく聞くと、それぞれ違いがあります。

   例1の学生は中国人留学生アルバイトとのコミュニケーション、例2はコーヒーの種類説明、例3はイベント時の準備・販売。

   そこで苦労したことは何か、などを事細かに説明する、それが「具体的」です。

上の世代との接触を見逃すな

   アルバイト以外ではどうでしょうか。定番と言えば「サークル」に「ゼミ」ですか。ここでもまた、具体性が問われます。サークル・ゼミの場合、アルバイト以上に同世代の学生同士のやり取りが紹介されることが多いため、より具体性が必要です。

   例4:「サークルでは副部長として部員を取りまとめる立場にありました。意見を調整することでサークル全体が盛り上がれるように工夫をしました。この経験を貴社でも生かしたいです」

   例5:「サークルでは副部長として部員を取りまとめる立場にありました。サークル合宿をどこにするかで意見が対立したときは私が仲を取り持ちました。この意見調整の経験を・・・」

   例4と例5は同じ学生の書いたものです。例4だと正直、誰でも書けますね。

   私に例4の添削依頼が来たので、「具体的に!」と言ったら、出てきたのが例5。本人にすれば、これで具体的なのかもしれませんし、たしかに例4よりはまだまし。

   とは言え、意地悪く言えば、「合宿地をどこにするかでもめたぐらいのことを丸く収めただけで、『経験を生かしたい』と言われてもねえ(苦笑)」となりかねません。

   ちなみに、例4も例5も、ガクチカへの回答。なぜ、具体的なことを書かないでおいて、その割に自己PRを入れたがるんだ? そもそも何のサークル? 社会人とやり取りするとか、なんかなかったの?

「えー、普通のボランティアサークルですよ。社会人とのやり取りと言っても、非公認サークルだったのを大学の公認サークルにするとき、学生課の職員と交渉したくらいで」

   それ、楽だったの?

「大変でした。うちの大学、公認サークルになるのがかなり難しいので」

   だったら、それ書こうよ。

「え? そんなのでいいんですか?」

   学生課との交渉が、なぜサークル合宿地の選定調整よりつまらないことと感じるのか、そこがわかりませんが、出てきたのがこれ。

   例6:「ボランティアサークルは私が所属した当初、大学の非公認サークルでした。公認サークルとなるためには学生課の厳しい審査を通る必要があります。そこで、今まで活動が不定期だったものを週1回としました。活動の模様を撮影し、その動画をサークルサイトで公開するようにしました。協力してくれる大学の先生を増やすために全研究室を回り、推薦文を書いてもらうように依頼しました。審査当日は資料を見やすく、動画も一部公開するなどした結果、公認サークルとなることができました」

   これ、例4・5と同じ学生ですよ。信じられます?

すごい話にこだわるな

   なぜ、具体的に書けないのか。学生に聞いてみると、

「いやー、説明しなくてもわかるかなって」

   採用担当者だって超能力者ではありません。具体的に書かないとわからないでしょ、と話すと、こんな意見も。

「自分がやってきたことはすごいことだ、などとは自信が持てません。普通か、それ以下のことなんだし。でも、なんかすごい話をアピールしろ、とマニュアル本には書いてあるし・・・。それで、抽象表現が多くなってしまうのです」

   一芸一能試験でもない限り、すごい話って必要ないのですけどねえ・・・。

   ともあれ、「具体的」が分からない学生の方には、ご参考までに。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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